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「高いほど売れる」原価10円の化粧品を3万円で買わせる“共同幻想”の恐ろしさ。巨額宣伝費をかけた新ブランドが次々と生まれて消えるワケ=神岡真司

“オイシイ”商売に次々とブランドが立ち上がる

業界が長年広告や美装のパッケージで培ってきた「幻想」が、これほどまでに消費者に浸透している商品はないでしょう。

たとえば、スキンケアのための基礎化粧品の原料は大半が、ただの水と油です。

水と油を混ぜ合わせるための合成界面活性剤のほか、色素・香料・防腐剤が入り、さらに特殊成分をほんのわずかに入れたとしても、十数円で完成してしまいます。

代表的な例が、しっとり効果満点のヒアルロン酸です。美容整形外科などでは、シワやたるみの解消にヒアルロン酸注射1cc(1g)を「5万円」などと称してボロ儲けしていますが、ヒアルロン酸は、1ccで6リットルもの保水効果があり、1ccでも「50円程度」の価格にすぎません。0.1ccを化粧品に加えただけでもしっとり感が抜群になり、原料費はたったの5円なのです。

基礎化粧品の原料費は、化粧水が1~2円、乳液が2~3円、クリームが5~10円ぐらいです。メイクアップ化粧品も口紅が5~10円、ファンデーションが15~20円程度です。いずれも激安でできてしまうのです。

それが数千円や数万円で売れてしまうのですから、ものすごくオイシイ業界といえるのです。

ゆえに参入企業が後を絶ちません。しかしながら、そこに激甚な競争が繰り広げられているのが化粧品業界なのです。

上位5社がシェア8割を独占

2020年の化粧品業界の市場規模は約2兆6,000億円ですが、資生堂、花王、コーセー、ポーラ・オルビス、ファンケルの上位5社で、何と8割近いシェアを占めています。

残りを中小・零細の数百社が競い合う構造です。

化粧品販売の業態としては、美容スタッフがカウンセリング販売を行う「制度品メーカー」。ドラッグストアや薬店などで卸問屋経由によって仕入れて販売する「一般品メーカー」。通信販売による「通販メーカー」。訪問販売で売る「訪販メーカー」があります。さらに100円ショップで売る「100円ショップ専業メーカー」などがひしめき合っています。

参入障壁の低い「化粧品業界」

ところで、化粧品の原価は激安ですが、莫大な広告宣伝費を注ぎ込まないと売れない商品です。つまり「売るためのコスト」が宣伝費以外にも多くかかります。

ただし、化粧品業界では、大手以外はファブレス化(工場を持たずに外部に製造委託)が進んでいます。外注で原材料仕入れ、乳化、練り加工、香料付け、容器、パッケージ作りまでやってくれる専業メーカーが数百社以上ひしめいているからです。

そのため、化粧品の「メーカー」といっても、製造設備が要らないために、参入障壁は非常に低いのです。

販売ルートさえ確立できれば、零細・中小メーカーでもなんとか成り立ちます。

ゆえに、ほんのちょっぴりしか配合していなくても、独自の特殊成分配合を謳ったり、商品の由来をストーリー仕立てで宣伝していきます。

そこに一定数のファンが付いてくれさえすれば、零細・中小企業でも生き残れる業界だからなのです。

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