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習近平はプーチンと「心中」する気か?ロシア衰退に付き合う中国外交の大失策=勝又壽良

資源大国ロシアが直面する経済危機。

国際エネルギー機関(IEA)の分析では、ロシアの石油生産は今年、15%減少し、2003年以来の水準に落ち込むと予想している。

調査会社ライスタッド・エナジーは、経済制裁が数年にわたり続けば、ロシアの生産量はウクライナ侵攻前の水準には二度と戻らない可能性があると指摘する。経済制裁を科されたイランやベネズエラなど産油国は、石油生産が深刻な打撃を受けて、それ以降なかなか回復できずにいる。ロシアも同じ道をたどることになりかねないと指摘されるのだ。

出典:ロシアのエネ業界に制裁の痛み、油田の衰退加速も -ウォール・ストリート・ジャーナル(2022年3月24日配信)

石油・天然ガスは、ロシア政府の歳入の約4割を占めている。この重要産業の需要が、西側諸国の輸入抑制によって生産量が落込むことは不可避だ。こうして、エネルギー業界に従事する推定150万人前後の労働者が、23年までに失業するとの試算もあるほど。

さらに深刻な事態は、国際石油資本がロシアのウクライナへ侵攻直後に、相次いでロシア撤退を表明したことである。英BPはロシア国営石油大手のロスネフチの株式20%近くを手放すと発表。英シェルは、ロシアでの合弁事業から撤退すると明らかにした。米エクソンモービルも、北太平洋のサハリン島で進めていた巨額の石油・ガスプロジェクトからの撤退を表明したのである。

外資系石油サービス会社は、ロシア石油業界に対してソフトウエアの6割を提供しているという。外資系は、先端的な探査・油田の保全技術で市場を支配している。その外資系がロシアから撤退すれば、新規油田開発も油田の保全技術も消えることを意味する。

この結果は自明であろう。ロシアのエネルギー産業に未来はないのだ。プーチン氏が、ウクライナ侵略によってもたらすロシア経済の破綻である。

中国企業もロシアと距離を取り始めた

イランやベネズエラなど産油国は、経済制裁を科されて石油生産が深刻な打撃を受け、立ち直れないでいる。数年先のロシア経済が、この状態に落ち込むとなれば、中国はどのように対応するのか。ロシアへは、西側諸国の経済制裁が掛かっている。中国はこの結果、安易に手を出せないのだ。

習近平氏は、外交的にロシア支援姿勢を崩さないが、中国経済界では習氏の意向を離れ「脱ロシア」姿勢に転じている。

中国石油大手の中国石油化工集団(シノペック)は、ロシアでの事業投資に関し、ロシア側との協議を一時中止したと報じられた。最大5億ドル(約610億円)を投じ石油化学プラントを新設する事業計画であった。金融面でも変化が起こっている。

中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、ロシアとベラルーシとの全ての取引を停止した。欧米が制裁を強化しているロシアへの金融支援に、中国政府が慎重になっている兆候だ。中国とブラジル、ロシア、インド、南アフリカ共和国の新興5カ国(BRICS)が設立した新開発銀行もこの日、「不確実性と制限の拡大」を理由に、ロシアでの新たな取引を棚上げすると発表した。

中国外交の奥歯に物が挟まったような発言とは別に、経済実務面で「脱ロシア」が進んでいる。これは、中国国内で対ロシアに関する意見が一致していないことを示している。

Next: ロシア支援と平和五原則の狭間で揺れる習近平。次の一手は?

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