今後、ロシア経済は「第2のイランやベネズエラ」になるだろうと予測されている。中国は、この零落するロシアを盟友として扱えば、「共倒れ」の危険性も出てくる。習近平氏が、いかに外交的に見通しが甘く、失敗したかがこれから明らかになるであろう。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)
※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2022年3月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
2月4日中ロ首脳会談での習近平の大失策
今から考えれば、2月4日の中ロ首脳会談は大きな外交的失敗であった。
プーチン・ロシア大統領と、習近平・中国国家主席の会談後に発表された共同声明で、両国は「限りない友情」を誓ったからだ。同盟関係にない両国が示しうる、最大の友好関係をアピールしたもの。これが、災いの原因になっている。
あれから20日後、ロシアはウクライナへ侵攻した。ロシア側からすれば、ウクライナ侵攻で支援を期待して、前記の共同声明を発表したに違いない。中国は、ロシアにまんまと一杯食わされた形だ。
首脳会談で、中国はロシアのウクライナ侵攻を聞き出さなかったのだろうか。もし、中国が聞き出さずに「限りない友情」を謳い上げたとすれば、習近平氏の外交感覚は批判されても仕方ない。
中国は欧米から批判の矢面
中国は現在、ロシアのウクライナ侵攻で困った立場に置かれている。
国連でのウクライナ侵攻に関する決議では、「限りない友情」の手前、ロシアを非難できずに棄権に回っている。こうした行動が、中国外交の基本である「平和五原則」に違反しているのだ。中国は、堂々とウクライナ侵攻へ「反対」すべき外交的立場なのだ。
「平和五原則」とは、1954年に中国とインドで取り交わされたものだ。以下のような内容である。
- 領土・主権の相互尊重
- 相互不可侵
- 相互内政不干渉
- 平等互恵
- 平和共存
これらの5原則に照らせば、ロシアのウクライナ侵攻は完全に誤りである。
中国は、「戦争反対」発言をすべきであった。西側諸国からは、中国が「棄権」しただけでなく、ロシアを擁護するような姿勢に深い疑惑の念を抱いている。米国は、ロシアが中国へ経済的・軍事的な支援を求めたという情報をいち早く公表し、けん制しているのだ。
ここで、中国がロシアを支援して、ウクライナ戦争を長引かせることになれば、人道的被害がさらに拡大される。
欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)、主要7カ国(G7)の首脳は、3月24日ベルギー・ブリュッセルで一堂に会し、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対して、結束して対抗する姿勢を示した。
その際、バイデン米大統領は中国に対しても警告した。米国は、すでに米中首脳のオンライン会談で、中国へロシア支援をしないように釘を刺している。ブリュッセルで、それをさらに明確にしたものだ。次のような記者会見であった。