完全週休2日制と残業禁止の導入で社員の手取り収入は減少へ
このような流れで、2020年の末頃から2021年にかけて、多くのテック企業、大手企業が続々と定時退社、完全週休2日制の実施に踏み切りました。
当初、私は疑っていて、建前は定時退社でも、本当は残業しているのではないかと思いましたが、中の人に聞いてみると、本当に定時退社になっていて、それまでに持分の仕事を終わらせられないと人事評価が下がるため、就業時間中はみなピリピリしているということでした。残業をしようとすると、上司から叱られるそうです。
これは労働環境という点では素晴らしいことですが、一方で、手取り収入が減るという大きな問題があります。
完全週休2日制の前、隔週週休2日制を採用している企業がけっこうありました。しかし、多くの社員が毎週土曜日は出勤をして、月に2日分の休日出勤手当をもらっていたのです。社員にしてみれば、週休1日制だと思えばいいことで、会社側もボーナスの一環として黙認しているようなところがありました。それで、手取り給与を上げていたのです。
ところが、定時退社、週休2日制が完全実施されると、2割から3割は手取り収入が減ることになります。エンジニアは、時間はあるけどお金がない状況となり、せっかくできた時間に遊びにいくのではなく、次の転職に有利になるように新しい技術を勉強したり、プライベートプロジェクトを進めたりしている人が多いということです。
このような大手テック企業の状況は他社にも伝播をするもので、「お金を使わない」感覚が思った以上に広がっているのかもしれません。
拡大路線から安定成長へのシフトチェンジで「軋み」
中国は2000年前後から奇跡とも言える高度成長をしてきましたが、2010年代半ばからは、いかに安定成長に軟着陸をするかということが大きなテーマになってきました。
社会と市場の仕組みを成長を前提としたものから、持続を前提としたものに変える必要がありました。この大きな変革をしている最中にコロナ禍が襲ってきたために、軟着陸が難しくハードランディングをせざるを得なくなっています。
これが2021年に行われた独禁法違反に関する罰金、市場規制などにつながっています。
特に大手テック企業は、それまで拡大を前提とした経営をしてきたため、安定成長にシフトチェンジをすると言っても、エンジンが高速で回ってしまっているために、ローギアになかなか入りません。
今になって、無理やりローギアに入れざるを得なくなり、さまざまな軋みが生じて、大規模リストラにつながっています。