世帯別トレーダー像と世界観
バブル期世代:1961年~1970年生(現在52~61歳)
平成バブルは、日本史上過去最大の好景気。日本の地価、株価は何年もかけて大きく上昇しました。
日経平均の年足をみれば明らかですが、80年代後半だけで日経平均は4倍。テンバガー銘柄が続出。日本国民総投資家となりました。外国人投資家が日本株を買いまくったのもこの頃です。誰もが日本株は一生あがると思っていました。
ちょうど、今の日本の投資家が米国株のGAFAM株の上昇に乗って、米国株を買いまくった昨年あたりの状況にソックリです(だから少し心配)。
土地の値上がりも強烈でした。山手線内の地価だけで、北米全土が買えるとも言われました。三菱地所がNYのアイコンのビルロックフェラーセンターのオーナーに、一時なったのもこの頃です。土地売却の利益を株式投資で運用する、といったレバレッジも掛けている投資家が多かったのです。
『ジャパン・アズ・ナンバーワン』『ノーと言える日本』など、強気一辺倒の上から目線系のベストセラーがでました。
この世代は、ワークライフバランスなど関係なく「24時間戦えますか?」というコマーシャルがヒットしたように、体力があり働いた世代。
平成バブルは1989年がピークでした。92年くらいまではバブルの残り香がありました。89年大卒入社組は現在55歳になっています。
バブルという日本史上最大の株式市場を体験しただけに、この世代は稼いだ分は使うという気持ちが強いです。稼いでいい家に住み、いい車に乗り、日本の消費に貢献してきた世代です。
バブル崩壊後苦しい時代がありましたが、基本的に株はファンダメンタルズに添って上がるもの、いい銘柄ならいつか戻ってくる、稼いでまた贅沢するのがモチベーションというのが代表的な世界観でしょう。
バブル後の20年にわたるデフレ期で株が上がらない時代を経験してていますので、下げ相場に対するディフェンス力もあります。ダメな時はやらないと、メリハリをつけるのもうまいです。
ただ、株は上がるものという世界観があるので、空売りが苦手、もしくはあまり空売りしようという気になりません。
ファンダメンタルズがいい銘柄は持っていれば戻るだろうくらいの感覚で、ロスカットも下手です。年齢的に資金力もある場合が多いので、ナンピンで失敗するのもこの世代です。
ただ、平成バブル、ITバブル、資源バブル、中国バブル、アベノミクス、コロナバブルといった大相場と、ブラックマンデー、バブル崩壊、リーマンショック、コロナショックという強烈な下げ相場を体験しているだけに、経験値と粘る力があります。
相場で困ったことがあれば、この世代に相談してみてはいかがでしょう?
バブルの雰囲気を知りたい人は、2007年の映画『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』をTSUTAYAなどで探して見てください。この映画は、私が外資系証券時代に六本木ヒルズの映画室をひとつ借り切って、社員と機関投資家を集めて、試写したことがあります。バブル世代は当時を懐かしみ、知らない世代はバブルの凄さを垣間見ることができて、大好評。まあ、このイベントを企画すること自体がバブル世代ですね。
バブルへGO!! タイムマシンはドラム式(2007年) 予告編
就職氷河期世代:1971年~1980年生(現在42~51歳)
大学を卒業するのが93年から2002年頃です。いわゆるアフターバブル。入社後にITバブルこそ経験しますが、ITバブルは平成バブルと違い、短期でした。それにまだ入社したてで、バブルを利用しての投資まで回らなかった頃でしょう。
その後、日本がデフレで成長しない時代に入り、失われた20年と言われたのが、1990年から2010年頃です。この世代の世界観は失われた20年に形成されています。日経平均年足をみても下げるばかりで何もなかった時期です。この世代は「失われた世代」「ロストジェネレーション」とも言われます。
株が上がることを知ったのは、おそらくリーマン・ショック前の07年頃の中国発の世界景気拡大の時期なのではないでしょうか?証券会社でも、この世代は株は下がるもの、株を知らない人に薦めるものではないとして、証券会社にいながらも、株のアドバイスの経験は少なく、投信、とくに分配型の投信の販売ばかりやっていた世代です。
基本的に株は上がらないと思っているし、バブル世代の元気さに付き合うのが面倒だと思っていた世代でもあるはずです。バブル世代ほど消費に対する欲求も強くありません。
証券界を辞めた人がすごく多いのもこの世代です。だから私の周りには、優れたトレーダーはあまり見かけません。むしろ、証券界以外の「IT系」や「ゲーマー」出身のトレーダーが多いのが、この世代の特徴ではないでしょうか?バブル期には優秀な人材が金融界を目指したものですが、バブル崩壊で優秀な人材は、IT業界や伸び盛りのゲーム業界へ行ったのかもしれません。その人達が、トレーディングで活躍しています。
「IT系」はトレードにクオンツ、自動売買などの要素を取り入れ成功している例も多いです。「ゲーマー」タイプは、PCモニターを4枚とか6枚とか並べ、チャートや板を見ながら、高速にスキャルピングしているイメージです。バブル世代の2次元トレーダーにとって、この3次元トレーダーは脅威でもあります。