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HIS「ハウステンボス900億円売却」報道、価格は適正か?日本企業ではなく外資系ファンドに買われるワケ=澤田聖陽

900億円は高すぎる?純資産の2.3倍という値付けに賛否

今回のPAGが提示している価格が約900億円とされており、2021年9月期末の純資産に対して約2.3倍の価格で買収を検討しているということになる。

この価格に対しては、高すぎるという意見が多いようであるが、たしかに直近の決算状況は赤字なので、その数字だけから買収価格を導き出せば900億円は高いということになるだろう。

ただし、直近2期はコロナの影響で特殊要因であり、インバウンド顧客が瞬間消失しているなかでの数字なので、ハウステンボス本来の収益力を示すものとは言い難い。

コロナ前の2019年9月期では経常利益ベースで60億円近くを稼いでおり、コロナが収まりインバウンド需要が戻れば、一定の時間が掛かるにしても、コロナ前の数字までは戻る可能性があるという指標にはなるだろう。

PAGは香港のファンドであり、クレジット&マーケット、不動産、プライベートエクイティ(PE)投資という3分野への投資を行っており、地域についてはアジア地域での投資に特化している。

特に企業投資、不動産投資で中国には多くの資金を投下しているようで、PAGはハウステンボスを買収した後、中国からインバウンド需要を取り込むような施策によって企業価値を高める自信があるのだろう。

カジノ誘致に光明アリ?

もう1つ、企業価値を高められる可能性があるのは「カジノ」の誘致である。

長崎県はカジノを含むIR=統合型リゾート施設の誘致の「区域整備計画」を作成し、2022年4月に国に申請を行っており、現在審査中の状況である。

朝長佐世保市長は、今回HISからPAGに経営主体が変わってもIR誘致計画に変更はないとしているが、カジノについては賛否両論あるものの、PAGとしてはハウステンボスを買収後の起爆剤としたいという思いがあることは確かだろう。

なぜ日本企業ではなく外資ファンドだったのか

今回はPAGという外資系ファンドが買収することになりそうだが、なぜ日本の企業や投資会社が最終的な買い手候補になれなかったのかを検証してみたい。

まず金額などのハードルがある。

今回のような1,000億円近い買収案件になると、日本の投資会社では対応できる規模のファンドがなかなかない。

借り入れも使って買収するとしても、1社1,000億円の買収案件については、ファンド規模で少なくとも数千億円規模のファンドでないと厳しいだろう。

Next: 日本企業が手を出せなかったワケ。ハウステンボスは復活するか?

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