円安はどこまで進むか?
冒頭に書いたドル円レートを決める3大要因を繰り返すと、以下である。
1. 日本の貿易収支(円の実需の売買を示す)
2. 日米金利差(資本実需の動向を示唆する)
3. 投機的売買(取引金額的には圧倒的だが、保有期間に制限がある)
これらの今後の展開を予測してみる。
(1)今年度の貿易収支は過去最大の赤字となる見込みだ。貿易赤字は今後も拡大する可能性がある。なぜなら、日本の輸出金額の大きなものは工業製品が主体だが、その多くは海外現地生産の比重の方が大きいために、円安で輸出急増とはなり難い。一方、輸入はエネルギー、原材料、通信・半導体・電子計算機、医薬品など、日本に代替品がないか、あっても競争力を失ったものがほとんどだ。軍需も同様だ。
(2)主要諸国は利上げを「正常化」と呼んでいる。つまり、政策金利をほぼゼロやマイナス金利とし、中央銀行の資産を短期間に10倍以上にもして、GDPの規模を超えさせた政策の方を「異常だった」と、インフレに苦しむ今ようやく認めたのだ。
一方、日銀の異次元は「Past the point of no return」、引き返せない所を超えてしまった。引き締めに転じられないだけでなく、転じても弊害だけがあって、効果がないのだ。アベノミクスは日本の金融政策を破壊した。このことと、私が考える日本経済の救済法は近著に詳しい。
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(3)上図01に見られるように、ドル円のロングは相当に巻き戻された。ドルと円の金利差の拡大は、ドルを持てばより多くのスプレッドが得られることを意味する。そのことを目的に材料の如何に関わらずドルを持ち続けている投機筋の存在を鑑みれば、現状のドル円ポジションはほぼゼロに落としたところから、今また積み上げ始めた段階だ。
繰り返すが、長期トレンドに与える影響は(1)(2)(3)の順番で、短期的な動向ではまったく逆の(3)(2)(1)の順番となる。これは短期的な動向は取引金額に左右されるが、長期トレンドは保有期間に左右されることを意味している。
この見方が正しいとすれば、現状では中長期的な円安を止める手立てはなく、短期的にも目先の円安を示唆している。
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』(2022年9月5日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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