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海外頼みでは円安もインフレも止まらない。1ドル140円突破からどこまで進む?相場を動かす3大要因から先を読む=矢口新

ドル円が140円台後半にまで上昇、1998年8月に付けた147円台後半まで高値の目途がなくなった。そこで気になるのが、円安ドル高はどこまで行くのかである。結論を言えば、円安はまだまだ続く見通しだ。ドル円レートを決める3大要因から解説したい。(『 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 』矢口新)

※本記事は矢口新さんのメルマガ『 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 』2022年9月5日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に 今月分すべて無料のお試し購読 今月分すべて無料のお試し購読 をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

ついにドル円140円突破「円安ドル高」はまだまだ続く

ドル円が140円台後半にまで上昇、1998年8月に付けた147円台後半まで高値の目途がなくなった。そこで気になるのが、円安ドル高はどこまで行くのかだが、結論を言えば、円安はまだまだ続く見通しだ。

私は、ドル円レートを決める3大要因は、以下であると著書やコメントでも言い続けている。

1. 日本の貿易収支(円の実需の売買を示す)
2. 日米金利差(資本実需の動向を示唆する)
3. 投機的売買(取引金額的には圧倒的だが、保有期間に制限がある)

長期トレンドに与える影響は(1)(2)(3)の順番で、短期的な動向ではまったく逆の(3)(2)(1)の順番となる。

これは短期的な動向は取引金額に左右されるが、長期トレンドは保有期間に左右されることを意味している。

その見方が正しいとすれば、(32年前の著書で指摘した市場価格変動の本質、構造的要因が間違っていないとすれば)、現状では中長期的な円安を止める手立てはなく、短期的にも目先の円安を示唆している。

これらは長年にわたって繰り返し、繰り返し述べているので、まずは 当メルマガ 当メルマガ で配信した今年8月1日付けのコメントから部分引用する。

7月29日のニューヨーク市場で円相場は3日続伸、前日比1円05銭円高・ドル安の1ドル133円20銭近辺で取引を終えた。2週間ほど前の139円台からは4%以上の上昇で、6月中旬以来の円高水準となる。

こうしたことで、今後は円安に進んでもそれはオーバーシュートで、円安は定着しないという見方が出てきた。ロイターの記事を引用する。
※参考:円安続かず、日銀の為替介入必要なし=「ミスター円」榊原氏 – ロイター(2022年7月30日配信)

(上記の記事にある)その意味では、「円安は(主に)日米間の金融政策の違いによって引き起こされた」と言っても間違いではない。

とはいえ、ここで(主に)を()で括ったのは、他にも金利差に負けない大きな要因が円安に繋がっているからだ。

この10年間で、このような勢いでドル円が上昇したのは2回目だ。2012年の後半から、2015年の終わりにかけてで、日米金利差は動かなかったが、ドル円は76円から124円に上昇した。この時の主な要因は、日本の貿易赤字だと私は見ている。

貿易赤字とは、輸入金額が輸出金額を上回ることで、日本の場合では主にエネルギーを買うための外貨需要が、輸出で得た外貨供給を上回ることを意味する。貿易赤字とは、端的に言えばドル不足で、そうしたドル買い需要がドル円レートを押し上げるのだ。

今回の円安ではどうか?

過去最大の貿易赤字になる見通しだ。日本は世界でも有数のエネルギー海外依存国なので、今後の世界情勢を鑑みれば、貿易赤字が定着してしまう可能性が高い。ウォールストリート・ジャーナルなどは、「米国産ガスが世界で争奪戦」としているので、高い天然ガスを買わねばならなくなる可能性が高い。

岸田政権はそうした今後の世界情勢を鑑みて、国防費を倍増させる計画だが、武器購入などで、ここでも大量のドルが必要となるはずだ。

また、日本は食糧の自給率を下げ続けている。ここでも外貨需要が減る見通しが立たない。エネルギーのほぼ全て、食糧の大半を海外依存していて、岸田政権はどのようにして日本を「自衛」するつもりなのだろか?<中略>

私が知る限り、世界的な利上げは進行中で、米国もまた道半ばだ。つまり、円相場トレンドの2大要因とも言える、日本の貿易収支と、円と海外金利差のどちらもが長期的な円安トレンドを示唆している。

こうした円安トレンドが止まる見通しは今のところない。どこまで行くのかさえ分からない。日本産業の空洞化により円安が輸出拡大に繋がる割合が下がっており、生活必需品の輸入依存を進めたために、円安がさらに貿易赤字を拡大させる可能性が高いからだ。

ここ20〜30年間の日本の政策は、海外へのバラマキを続けながら、海外への依存を深めると言う奇妙なもので、日本を土台から弱めることに繋がってきた。

その結果ともいえる貿易実需と資本実需が置かれた現況を鑑みると、ここ2週間ほどの円高は投機資金の反対売買によるものである可能性が高い。そうした自律反発によるものでは6~7円幅の反転は十分な値幅なので、経験則から円安に戻る日も近いと見ている。

※参考:・ここからは円高か、円安か? – 矢口新の生き残りのディーリング(2022年8月1日配信)

上記コラムには図表も挙げているので、ぜひ参照していただきたい。ちなみに、7月中旬以降の投機的なドル円ロングは、下図右端の矢印で示したように、急激に巻き戻された(円ショートが減り、円ロングが増えた)結果、ドル円の高値から安値までの変動幅は約9円に達した。

シカゴの円先物ポジション(出所:IMM)

参考図01:シカゴの円先物ポジション(出所:IMM)

100円近辺の7円幅は7%で、130円近辺の9円幅に相当するが、これは後付けの言い訳で、このところの変動幅は経験則を超えて大きい。

Next: どこまで行く?海外頼みでは円安もインフレも止まらない

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