FRBのインフレへの徹底交戦発言を褒めたた、日銀を無為無策と批判する意見をよく見かけるが、日銀は超低金利の持続という世界で唯一無二の政策をあえて続けているのだ。円安に放置され割安になっている日本株を、いずれ世界は無視できなくなるだろう。(「週報『投機の流儀』」山崎和邦)
※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2022年9月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴61年、前半は野村証券で投資家の資金を運用する「セルサイド」、後半は自己資金で金融運用する「バイサイド」、晩年は現役研究者と、3つの立場で語ることを信条とする。2022年85歳で国際コミュニケーション学博士号を取得。
孤高の日銀、超低金利政策に潜む大チャンス
孤高の日銀と書くと一応カッコウはつくが、実は量的緩和の脱出には高い経費がかかる。量的緩和でアベノミクス景気を作出した日銀は、それなりに大きな功績であったし、金融緩和によって、70円台の円ドル相場が125円(アベノミクスの壮年期相場)にまで持って行って、大いに日本経済を潤したその功績は大きい。しかし、量的緩和は結果的に「高い買い物」であったのかもしれない。量的緩和からの脱出は非常に困難である。無理に行えば、必ず経済を破壊する。
安倍首相在任中に消費税を2回引き上げて、5%を10%にした。その2回とも四半期別のGDPはマイナスになった。これを黒田総裁は非常に警戒していた。財務省出身で立場上、消費増税に賛成はしていたが、その結果は予知していた。同じく、今、インフレを抑えるために金利を引き締めるとどういうことになるか明らかな予測を持っているに違いない。
日銀は無為無策ではない。敢えて超低金利を維持して、日本の将来のための大きなチャンスを作っているのだ。
1)円安による世界的な物価安の日本
2)長期金利安と株式益回りの高さによる日本株の世界的割安感の醸成
この1と2の二つの割安を日銀が作り出しているのだ。このことは稿を改めて述べたい。
覚悟を決めたFRBと動かぬ日銀
1年前のジャクソンホール会議でサマーズ元米財務長官がインフレをアドバイスしたところ、パウエル議長は「これは一時的なものだ」と突っぱねた。これが間違いのもとであったことは世界も認め、彼自身も認めている。
そこでFRBは今年3月以降に大幅な利上げを続けており、9月に0.75%利上げに踏み切ると政策金利は3~3.25%となる。6月時点の予想(3.4%)から上離れる可能性がある。FRB議長は経済の軟着陸よりもインフレ抑制を優先する姿をはっきり見せた。NYダウはジャクソンホール会議をはさんで4日連続安をして、下げ幅は1700~1800ドル(5.4%)に達した。市場ではFRBの今後の行動については色々な憶測があるが、結局は米景気を犠牲にしてでも、量的緩和は高い買い物であったとわかっていても、引き締めを継続すると見た方が適切であろう。
一方、黒田総裁は来年3月までの任期は7ヶ月間。次の総裁がどのような問題を抱えて出発するのか難しいところに来ている。日経ヴェリタス紙9月4日号の第一面のトップ記事の見出しは「動けぬ日銀 覚悟のFRB」。サブタイトルが「緩和脱出の難路、市場は景気失速を懸念」であった。まあ、そんなところであろう。
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