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仮想通貨のマイニング産業は崩壊するのか?2023年ビットコイン相場予測と「クジラ」の動き=高島康司

北米の大寒波による電力供給不足

さらに、大手マイニング企業の経営を悪化させているのが、いま全米を襲っている大寒波とそれによる電力供給不足による稼働率の低下だ。

「BTC.com」のデータによると、ブロックチェーン上の計算能力を示すビットコインのマイニングハッシュレートは、12月21日から24日の間に約100エクサハッシュ/秒(EH/s)、つまり40%低下し156EH/sとなった。

BBCによると、米国とカナダは北極の嵐に見舞われ、米国西部のモンタナ州では-45℃まで気温が下がり、ニューヨーク州西部は43インチもの雪で覆われた。CNNによると、この嵐により少なくとも37人が死亡した。

マイニング企業は、安価な電力の供給を保証する電力会社との契約で操業している。しかしこの契約は、寒波の到来などで電力需要が逼迫した場合には、国民の生活には直接関係のないマイニング企業が、操業の規模を縮小させて、ライフライン維持のための電力供給を優先させるとの協約がある。今回の大寒波でがこれが実行された結果、ハッシュレートが大幅に減少したのである。もちろんこの結果、マイニング企業の利益も減少した。

情報プラットフォーム、「Mining Pool Stats」の統計によると、米国最大のマイニングプールである「Foundry USA」は12月23日にハッシュレートの半分以上を失い、主要プールの中で最大の損失となった。

米国最大の採掘業者の中にも、操業を縮小したところがある。最近、「連邦破産法第11条」の適用を申請した「RIOT」や、「Core Scientific」などがそれである。テキサス州では、12月25日の午前6時に産業規模のビットコインのマイニングが99%がオフになったと、業界団体の「Texas Blockchain Council」はSNSに投稿している。

これはマイニング企業が、大寒波のなか電力網の維持を優先し自らの判断でマイニングを抑制した結果ではある。しかしながら、これはマイニング企業の損失を拡大させ、準備金として保有しているビットコインの一層の売りにつながったのだ。

これが年末から年始にかけて、ビットコインの相場を低迷させる原因のひとつになった。

大手マイニング企業のハッキング

悪いことは連続するものである。このようにマイニング産業にとっては痛手となる出来事が多い中、今度はマイニング大手がハッキングされたのだ。

この事件もマイニング産業の低迷を強く印象づけることになってしまったようだ。

「BTC.com」の親会社である「BIT Mining Limited」は、12月3日にハッキングされ、顧客資産約70万ドル、会社資産230万ドルが盗まれたと発表した。深センの法執行当局に事件を報告し、「BTC.com」のデジタル資産の一部はその後確保された。当局は12月23日にこの件に関する調査を開始した。「BTC.com」は現在、通常通りり事業を展開しており、デジタル資産サービスを除けば、クライアントファンドのサービスに影響はないとのことだ。

この事件そのものは、被害額は大きくないことからたいした事件ではない。しかし、マイニング産業の苦境と低迷が続くなか起こったので、市場には産業分野としてのビットコインのマイニングの将来性を危ぶむ声が多くなり、これがビットコイン相場のさらなる低迷に影響したようだ。

株式や金を下回ったビットコイン

ビットコインはこうした状況なので、2018年以来、株式や金のパーフォーマンスを下回った。

ビットコインのパーフォーマンスの悪さは、「FRB」がインフレの上昇を抑制するための金利引き上げ、そして、「Terraform Labs」、「Celsius Network」、「Three Arrows Capital」、「FTX」などの多くの暗号企業の崩壊、さらに苦境にあるマイニング企業による準備金の売りなどによって説明できる。

この結果、2022年にビットコインは70%も下落し、そのパーフォーマンスも2018年以来株式や金のそれよりも下回ってしまった。

一方、米国のベンチマークであるS&P500は、12月28日現在で3,813ポイントと、YTDで20%近く急落している。これは、2008年の経済危機以来、暦年で最大の下げ幅を記録している。この大惨事は、ハイテク企業の多いナスダック総合株価指数の方が深刻で、前年同期比35%減となっている。

注目すべきは、前年同期比約50%下落した「アマゾン」、72.75%下落した「テスラ」、65%下落した「メタ」などである。このように、ハイテク株とビットコインは2022年には同じような損失を被っている。

ビットコインと同様に、「FRB」の利上げが米国株式市場の悪いパフォーマンスの最も重要な要因であることに変わりはない。しかし、金融引き締めが2023年に景気後退を引き起こすかどうかはまだわからない。

このような不確実性から、資本は安全性を求めて米ドルに向かい、外国主要通貨に対するドルの健全性を測るバロメーターである米ドルインデックス(DXY)は、前年同期比で約8.5%上昇している。

Next: 2023年後半から強気相場?クジラの動き

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