ソープ嬢として働くのに必要な「大前提」とは
本田:ただ、大久保公園に立っている子で言えば、誰もがソープを含めた風俗に行けるわけではないので、「大前提」がクリアできない子は風俗はやらないほうがいいかもしれません。
鈴木:「大前提」とは?
本田:最初に「選ぶ権利がなくなる」ことです。もし大久保公園に立っている子が不特定多数に選ばれることに耐えられるんだったら、高級ソープ店で働くほうが絶対的に得なんです。自分も会う前から相手を選ぶ側でいたいという気持ちが強くあった場合、はじめて会った瞬間に「このお客さんは嫌だよ」と仕事を断る姿勢では、風俗のお店にいることはできませんよね。
鈴木:おっしゃるとおりですね。相手を選ぶ気持ちがある場合はやっぱりやらない方がいいと?要するに覚悟があるかないかということですね。
本田:自分は本当にどこまで働けるかっていう、その覚悟が必要ですよね。自分のできる範囲がどこまでか、そこに倫理観とか道徳観とかってなってくると、ちょっとややこしくなるんですけど、とにかくお金のために自分はどこまで働けるか、そういうところになってくるかと思います。
鈴木:なるほど。稼ぐためには「自分を知る」ことが重要だというのが理解できました。そうであれば、ソープに行く女性たちはもう覚悟ができてる?
本田:「なんとなく」ではじめる人も実際には多くて、その人たちはやっぱり働きながら「自分はそこまでの覚悟がなかったな」とか、いろんなことに気づいて辞めていったり、ちょっと軽い性風俗に移っていったりすることもあります。箱型のヘルスだったり。性風俗では需要がないけど、メンズエステだとかそちらのジャンルだったら、わりとお客さんがつくって人もいるんです。
鈴木:自分がどこに合うのかっていうのは最初分からないから、試さなきゃいけないってことですよね。
本田:本当は試す前から分かってれば一番いいんですけど、自分が何をしたいかが分からなくて、なんとなく仕事に就く女の子もすごく多いのです。探求心とか行動力があるけど、そこまで自分がない。でも自分がないからこそ、探求心とか行動力を優先して働ける。倫理観とか道徳心とかはちょっと置いておいて、お金を稼ぐための最大効率は何かっていうことを考えて、行動に移せる……。
鈴木:真っ白なキャンバスに塗っていく感じでしょうか。
本田:ただ、その場合って、まだ本当に「自分の気持ちがどうか」ということには向き合ってない状態なんですね。だから、合っていないと思ったら、すぐに仕事を変えたほうがいいですね。メンタルのためにも。ムリしてメンタルがおかしくなって自傷したりするよりずっといいと思います。

撮影:紅子
「吉原」ブランドはほかの歓楽街と何が違う?
鈴木:ところで、本田さんは吉原のソープですが、吉原と他の地域のソープ街では何か違いみたいなものはありますか?
本田:吉原は本当に一種のブランドであって「吉原で働いていた」というのは箔がつくんです。地方の出稼ぎに行くとわかります。「吉原で働いていました」という人が和歌山だとか新潟だとか行くと、「吉原からキレイなお姉さんが来てくれた」と、すごく喜ばれてすごく稼げたりするんです。
鈴木:なるほど。吉原の知名度が活かせるわけですね。
本田:ただし、短期の出張の場合は休みがないんですね。出稼ぎで食いつないでいる女の子は、出稼ぎの4日間はフル稼働するんですけど、普通は4日間連勤なんてしないんです。2日出勤したら1休み、3日出勤したら1休み。野球の選手じゃないですけど毎日出ていたら体が壊れちゃうから、アスリートと一緒で体との相談しながら仕事をします。でも、出稼ぎ組はそんなこと言ってられない。行った先がピークで人気だから。その4日間で、できるだけ打数を上げなきゃいけない。休まず働いて、戻って休む。とてもキツくて毎回毎回できるものではないと思います。
鈴木:身体が壊れるギリギリまで働くということですよね。1か月のうち、4日だけ働いてゆっくりするというのは難しいのでしょうか?