いまパーティー券販売のキックバックを介した裏金作りで安倍派と二階派が特捜部の捜査のターゲットになっている。なぜこの二派だけが捜査の対象になっているのだろうか?背後にあるアメリカの動きを見るために、米シンクタンク、「CSIS」の日本に関する過去のレポートを見る。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
なぜ安倍派と二階派だけがターゲットなのか?
パーティー券販売のキックバックによる裏金作りの問題の裏にある、アメリカの意図と動きについて読み解きたい。
12月19日、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部は、政治資金規正法違反の疑いで強制捜査に乗り出し、東京千代田区にある安倍派「清和政策研究会」と二階派「志帥会」の事務所を捜索した。
昨年までの5年間で安倍派はおよそ5億円、二階派は1億円を超えるパーティー収入を政治資金収支報告書に記載していなかった疑いがあり、特捜部は派閥の幹部や議員の認識など詳しい経緯について実態解明を進めるものとみられる。
安倍派と二階派の2つの派閥側は、所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分の収入を議員側にキックバックし、その分を派閥の政治資金収支報告書にパーティーの収入として記載していなかったなどとして政治資金規正法違反の疑いがあるということだ。
こうした動きがほぼ毎日主要メディアで報道されているが、違和感を感じないだろうか?
政治資金パーティー券の販売を通したキックバックによる裏金作りはかなり以前より行われている自民党の慣行であり、岸田派も含めすべての自民党の派閥が行っていることは、比較的以前から知られていたことだ。
それなのに、なぜ安倍派と二階派だけが強制捜査のターゲットになったのだろうか?そこには、なんらかの政治的な背景があるのではないだろうか?
アメリカに警戒されていた二派
もちろん100%証明できているわけではないものの、安倍派と二階派の2派だけが強制捜査の対象になった背景には、米国覇権の世界秩序の維持を目的にした外交政策集団、「外交問題評議会(CFR)」の影響力の強いバイデン政権の意向があったとする観測が強くなりつつある。アメリカの関与でもない限り、裏金作りが常態化した自民党で、なぜ安倍派と二階派だけが強制捜査のターゲットになったのか説明がつかないのだ。アメリカの意向が本当にあったかどうかは証明できないとしても、そのような仮説は十分に成り立つと思う。
昨年の7月8日の銃撃で安倍元首相が殺害されてから、すでに1年半が経過している。その間、内外の情勢は激しく動いているので、安倍殺害の記憶は次第に遠くなりつつある。だが、安倍元首相のレガシーは安倍派に残り、それが「CFR」の影響下にあるバイデン政権を依然として警戒させているという状況は確実に存在するように思う。
日本の憲政史上最も長期間続いた安倍政権は、外交政策では、右派のナショナリズムと現実的なプラグマティズムの2つの側面を合わせ持った政権だった。
中国と韓国の度重なる抗議、さらにアメリカからの自重を求める声を無視していまだにA級戦犯を祭る靖国に参拝を繰り返し、自主憲法の制定を強く主張するナショナリストとしての側面もあれば、お互い協調し脅威とならない関係の構築で中国と合意して日中関係を改善に導き、また米オバマ大統領の自制要求を無視してもロシアのプーチン大統領と幾度も会談し、日ロ関係を強化するという現実的なプラグマティストの側面も持っていた。
ロシアのウクライナ侵攻が始まってからは、ロシアを非難しつつも、NATOの東方拡大がロシアの侵攻の引き金となったとし、ロシアにも一定の理解を示す論理を展開した。
一言で言うと、ナショナリストとプラグマティストの両面を使い分けながら、日本の国益を追求する独自な外交を展開したのが、安倍政権だったのかもしれない。このナショナリストとプラグマティストという2つの側面の混在は、安倍亡き後の安倍派にもそのレガシーは引き継がれていると見るべきだろう。
しかし、このような安倍政権はかなり以前から、「CFR」の影響力の強い米政権から警戒されていた。トランプは「CFR」の影響を排除した政権だったので安倍と安倍派への警戒感は一時的に弱まったものの、外交政策は実質的に「CFR」の影響下にあるオバマとバイデンの民主党政権では、警戒感が強かった。