2014年の「CSIS」のレポート
アメリカの政権に影響力のあるシンクタンクが、同盟国である日本の政権をネガティブに描写するレポートを公開することはめったにないことである。ほとんどレポートは、日米同盟関係の強化の方向性を示すもので、日本の政権に対するあからさまな疑念や批判はない。
しかし、安倍政権の場合は例外であった。第二次安倍政権成立の約2年後の2014年10月、「CSIS(国際戦略問題研究所)」は衝撃的な内容のレポートを公開した。このメルマガでは発表された当時に記事にしたが、ぃま安倍派の強制捜査が続く中、このレポートの中身を再度見ておくべきだろう。
「CSIS(国際戦略問題研究所)」は、リチャード・アーミテージやジョセフ・ナイなどの軍産複合体系のジャパンハンドラーが結集しているシンクタンクだ。そこは2014年10月に、「安倍の危険なナショナリズム」というレポートを出した。
・Abe’s Perilous Patriotism
http://csis.org/publication/abes-perilous-patriotism
この文書は珍しく強い言葉で、安倍政権の姿勢を批判している。
「バランスの破壊者」安倍
まずこの文書では、戦後日本には次の3つの政治機軸が存在していたとし、それらの間で成り立つ日本特有のバランスがあったことを明らかにしている。
<1. リベラルないしは左派>
太平洋戦争は日本国民が軍部および戦前の支配層にだまされた結果引き起こされたとして、戦前の体制と歴史を批判。戦前の体制を完全に脱却し、平和で豊かな日本の構築を模索する。
<2. 保守ないしは右派>
敗戦によって日本国と日本国民の一体感は失われてしまった。この一体感を回復するためには、神聖な日本国の概念を取り戻す必要がある。それには誇りが持てる歴史の解釈が必要だ。
<3. 中間派>
左派と右派のイデオロギー論争からは距離を置く。政策実現のために現実主義的な路線を採用。
<日本政治のバランス>
戦後の日本政治は、「リベラル」を基調としながらも、10年に一度くらいの割合で右派の巻き返しがあった。しかしながら、右派の挑戦が行き過ぎると国内の強い反対に合い、内閣支持率が低迷。右派の政権は退陣した。他方、右派の政権では日米同盟が強化されてきたとしている。
当初アメリカは、安倍政権もこのメカニズムで調整され、日本は過度なナショナリズムに走ることはないと見ていた。いずれ安倍政権の支持率は落ち、穏健でリベラルな政権に交代するはずだとしていた。
しかしながら、いまの日本ではこのバランスのメカニズムが機能しなくなっているようで、そのため安倍の過度なナショナリズムには歯止めが効かなくなる可能性があると警告ししている。







