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なぜ実質賃金は上がらないのか。春闘で歴史的賃上げも年内のプラス転換が難しい5つの要因=斎藤満

電力の連続値上げ

そして6月(5月使用分)からは電力・ガスの値上げがあります。

政府の激変緩和措置による補助が5月使用分は半分になり、その影響で世帯当たり500円から700円の値上げになります。さらに、5月使用分から再エネ賦課金が引き上げられ、その分で世帯当たり630円から840円の値上げとなります。

さらに7月には激変緩和措置の残り半分の補助もなくなるので、ここでまた500円から700円の値上げとなります。

6月・7月を合わせると、世帯当たり1,700円から2,300円もの値上がりとなり、5月までと比べると大幅な値上げとなります。

これだけで物価を0.6%から0.8%押し上げる計算です。

賃上げの価格転嫁

そして同じころ、サービス価格を中心に、賃上げ分の価格転嫁値上げが予想されます。

賃上げの実施は早い企業で4月から、そして7月ころまでに漸次実施されると見られます。その分企業の人件費が増えます。政府は人件費増の一部を法人税の控除で支援し、さらに賃上げ分を価格転嫁するよう、企業に働きかけています。

企業によっては実際の人件費増を見てから価格転嫁値上げに出るところもあるようですが、あらかじめ人件費増を見込んで値上げに出るとすれば、この夏までにサービスなどを中心に、人件費値上げ(賃金インフレ)が生じる可能性があります。

CPIは3%台後半に高まる

この結果、CPI上昇率はこの5月あたりが底で、その後またはっきりと上昇に転じるとみられます。

そして実質化の計算に用いられる「帰属家賃を除く総合」は、足元の3%弱から、夏場以降は次第に高まり、前年比では3%台後半になるとみられます。少なくとも現在のような名目賃金の伸びでは、実質賃金はプラスになりません。

5%春闘で、現実の名目賃金が4%以上の伸びに高まれば、実質賃金も安定的なプラス化が見込まれます。しかし、このハードルが高いのです。

今年の春闘も大企業についてみれば5%台の大幅なものとなりましたが、中小企業については4.4%台との発表もあり、これが把握していない中小零細企業まで入れるともう少し低くなる可能性があります。

Next: 年内は厳しい?まだまだ遠い実質賃金のプラス化

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