1ドル100円が均衡水準とすると160円の円安は円の価値を6割も下げていることになり、1日10時間働く労働者は6時間分の給与しかもらえないのと同じことになります。5%台のベアなどと言って喜んでいる場合ではありません。
もはやハワイにもグァムにも旅行できなくなります。そして輸入牛肉やオレンジジュースが円安の分高くなって買えなくなります。アルゼンチンの二の舞です。
非対称的な政府の為替評価
大幅な円安が物価高につながり、国民生活を圧迫していることは周知の事実となりましたが、日銀は円安是正のために金融政策が縛られることを嫌います。
実際、日銀幹部は「国際金融のトリレンマ」を引き合いに出し、自由な金融政策,自由な資本移動、為替の安定の3つを同時に達成することはできないと説明、為替円安のために金融政策の自由(緩和を続けたい)を犠牲にはできないといいます。
しかし、これは日銀の「詭弁」です。
黒田総裁までの日銀は、為替の円高を回避、抑制するために、あえて大規模な、そして非伝統的な手段を用いてまで金融緩和を進めてきました。円高を抑えることが最優先され、そのために「普通の金融政策」を手放したのです。つまり、黒田総裁までの日銀も「国際金融のトリレンマ」に直面する中で、為替の安定を最優先し、金融政策の自由を放棄してきました。
その日銀が今になって円安を是正するための金融政策、つまり利上げなどの引き締め策はとれないというのは、あまりにご都合主義です。これは国民の声よりも財界の声を優先する政府日銀の姿勢の表れです。
円高は国民生活にはメリットが大きい反面、輸出企業にはハンデがきつくなり、収益を圧迫します。だから国民は円高歓迎でも企業は円高に反対し、政府日銀は財界の声を尊重します。
そして円安は国民がコスト高で生活が圧迫され、「困ったこと」と感じる一方で、トヨタなど輸出型企業が円安で大きな利益を得られるため、政府日銀は円安に寛容です。さすがに企業でも輸出に縁のない国内型の中小企業からは「円安は困る」との声が上がるようになりましたが、政府日銀は依然として財界配慮の政策を続けています。
このため、円高の時には「円高デフレの回避」を前面に出して積極的に利下げ、量的緩和を進めますが、円安が行き過ぎても、為替安定のために金融政策の自由を犠牲にはできないという「二枚舌」を使うのが今の政府日銀です。これはメディアも糾弾しなければなりません。






