顧客属性の変化
一方で、顧客の属性も変化しています。
近年は特に、外国人来園者が増加しています。来園者に占める外国人の割合は2020年の10%がこれまでの最高でしたが、2024年は12.7%、2025年は14%となる見込みです。
出典:オリエンタルランド 決算資料より作成
この背景には、円安で外国人観光客が増加した恩恵があると考えられます。さらに、先ほど述べたディズニー・プレミアアクセスは外国人により人気です。したがって、外国人来園者が単価の上昇に貢献してる側面もあるでしょう。
加えて、近年は40歳以上の来園者が増加傾向にあります。
出典:オリエンタルランド 決算資料より作成
少子高齢化の影響もあるかもしれませんが、10年、20年前に比べると、より大人の来園者が増加しているのです。となるとやはり、これも単価の上昇に貢献している可能性があります。
とはいえ、足元では商品飲食原価などのコスト上昇の悪影響があります。
出典:ファクトブックより作成
しかし、そのコスト上昇を上回るペースで単価の上昇が起きていることから、2024年は営業利益率の面でも過去最高を達成しているのです。
出典:マネックス証券
これが、現在のオリエンタルランドの好調を支える、単価の上昇と来園者構造の変化です。
現金と収益性への考察
次に見ていきたいのが資本収益性に関する考察です。投資家にとって重要な指標であるROEの推移を見てみましょう。
出典:マネックス証券より作成
論点としては、2010年代後半はなぜROEが悪化したのか、という点です。
ROEを売上高純利益率、総資産回転率、財務レバレッジ3要素に分解してみます。
これを見ると、売上高純利益率は上昇していますが、総資産回転率が悪化し財務レバレッジも低下しています。
つまり、この時代は利益は稼いでいたものの、稼いだ現金をどこに使うのか決めきれず、総資本・純資産だけが増加していったフェーズだったのです。
しかし、近年は新エリアの開拓や新規事業への投資など現金を積極的に使用する動きがあります。
具体的には、TDLの新エリアであるスペースマウンテン改修への投資750億円やTDLの新エリア、ファンタジースプリングスへの投資3,200億円などです。
さらに今年に入り、3,300億円を投じてクルーズ事業へ新規投資をする発表もありました。
出典:決算短信より作成
「3,300億円も投資して大丈夫?」と思われるかもしれませんが、24年3月時点で4,000億円近い現金同等物があることに加え、営業キャッシュフローとして年間2,000億円近い収入があることから、大きな心配はないように思います。クルーズ事業が始まる28年までは積極的な投資が目立つ局面となりそうです。
よく稼ぎ、よく投資する。その投資を使ってさらによく稼ぐという流れに乗ることが最も資本収益性が高まります。
この流れに乗っていけるかが、今後の成長性や資本効率に大きな影響を与えるでしょう。