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英国EU離脱「本当のリスク」~欧州に手を伸ばすプーチンと米ネオコンの狙い=斎藤満

再び欧州に手を伸ばすプーチン

また、これまで経済制裁もあって欧州に対して力を減じてきたロシアが、欧州の結束が弱まると、再び欧州に手を伸ばす余地が出てきます。

特に、ドイツとロシアの関係は親密で、メルケル首相はロシア語が、プーチン大統領はドイツ語が堪能で、二人の会話は相手国の言語でなされると言われます。英国なき後の欧州には、ロシアはドイツを足掛かりにして進出できます。

米ネオコンの影も

また、英国で離脱派を刺激している力として、米国のビクトリア・ヌーランド国務次官補の名前が挙がっています。彼女はネオコンの一人で、ネオコンは欧州の弱体化を図って米国の影響力を広げたいとの思いがあります。

英国がEUから離脱すれば、欧州の弱体化が進み、ロシアや米国の影響力が強まり、政治的に不安定になる懸念があります。

EU離脱が欧州紛争の火種に

さらに、英国がEUから離脱すれば、英国内ではスコットランドや北アイルランドが独立機運を高める刺激剤になる可能性があり、合わせてスペインでも独立運動が刺激される可能性があります。

フランスではルペン党首の極右勢力が勢いを増すのではないかと思います。特に英国が離脱して移民受け入れを拒めば、大陸欧州での移民問題がより強まります。

英国のEU離脱をきっかけに、ナショナリズムの台頭、民族性、宗教面での対立分裂が進むリスクもあり、これが欧州や周辺での紛争の火種になりかねません。

政治的な軋轢が大きくなれば、これが経済行為の制約になり、特に保護主義を刺激してしまうと国際貿易の抑制につながり、単一通貨のメリットを脅かす面もあります。

英国のEU離脱問題は、直接経済の制約になるわけではないとしても、政治的なバランスの変化から経済統合にひび割れを起こし、モノ、カネの流れを悪くする面があります。

何より、国際紛争を起こしやすくなる面があるだけに、そこには計り知れない影響が生じるリスクがあります。

EU統合にはノーベル平和賞に値する大きな意味があり、英国がこれに波紋を投げる可能性があるのです。

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マンさんの経済あらかると』(2016年6月15日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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