トランプ大統領が就任した。日本でもトランプ政権に関しては多くの報道がされているものの、結局トランプ政権が本質的にどのような政権になるのか、まともに報道されていないようだ。そこで今回は、トランプ政権の基本的な性格について述べる。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
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トランプ政権の本質的な性格
1月20日、ワシントンでアメリカ大統領と副大統領の就任式が行われた。連邦議会議事堂の円形大広間で、先にJ・D・ヴァンスが副大統領として、続いてドナルド・トランプが第47代大統領として、それぞれ宣誓し、就任した。通算2期目のトランプ政権が始動した。
30分ほど続いたトランプの就任演説は、トランプの独自性を全面に出したユニークなものであった。通常就任式の演説は、自由と民主主義という国家の理念を高らかに宣言し、国民の結束を促す内容になることが多い。具体的な政策に言及することはない。ところがトランプは、「常識の革命」を主張し、停戦と戦争の回避、そして取り組む具体的な政策について述べた。それらは以下のものである。
・不法移民政策(南部国境に非常事態宣言)
・高関税の適用(外国歳入庁の設置)
・パナマ運河の米国所有
・国家エネルギー緊急事態宣言
・政府効率化省の設置
・電気自動車の義務化の撤廃
そしてトランプは、「アメリカの黄金期は今から始まる」「今日のこの日から、我々のこの国は繁栄し、尊敬される」と就任演説を開始し、「私はただひたすら、アメリカを第一にする」と約束した。
選挙結果をもって自分は国民への「ひどい裏切りを完全に逆転させる」よう信任を得たのだとトランプは述べ、「信仰と富と民主主義と、まさに自由」を国民に返すと主張。「この瞬間から、アメリカの衰退は終わった」とも強調した。
就任式の後、トランプ大統領は2万人の支持者が待つ屋内アリーナに移動し、支持者の前でパリ協定離脱など8つの大統領令を即座に署名した。サイン用の万年筆は複数用意されており、サインした後は集まっている支持者に投げ与えた。そして、その後はホワイトハウスの執務室で集まった記者の質問に答えながら、残りの大統領令に署名した。
以下がホワイトハウスが発表した47の大統領令だ。
1. トランプ大統領、閣僚・閣僚級人事を発表
2. トランプ大統領、サブキャビネット人事を発表
3. トランプ大統領、閣僚代行および閣僚級役職を発表
4. トランプ大統領、議長および議長代行を指名
5. 就任式当日の米国国旗掲揚について
6. 有害な大統領令や行政処分の最初の取消し
7. 言論の自由を回復し、連邦政府の検閲を終わらせる
8. 連邦政府の兵器化に終止符を打つ
9. 対面業務への復帰
10. 審査待ちの規制凍結
11. 雇用凍結
12. 米国家庭への緊急物価緩和と生活費危機の打開
13. 国際環境協定でアメリカを第一に(パリ協定離脱)
14. 2021年1月6日の米国議会議事堂周辺での出来事に関連する特定の犯罪に対する恩赦と減刑の付与
15. Tiktokへの外国敵対勢力管理アプリケーションからの米国人保護法の適用
16. 世界保健機関(WHO)からの米国の脱退
17. 連邦職員内の政策に影響を与える役職の説明責任を回復すること
18. 選挙妨害および政府機密情報の不適切な開示に対する元政府高官の責任追及
19. 米国南部国境における国家非常事態の宣言
20. 大統領府職員のセキュリティ・クリアランスの滞留を解消するための覚書
21. アメリカ第一の貿易政策
22. 米国の領土保全における軍の役割の明確化
23. アメリカのエネルギーを解き放つ
24. 米国の難民受け入れプログラムの再編成
25. アメリカ市民権の意味と価値を守る
26. 国境を守る
27. 魚よりも人間を優先:南カリフォルニアに水を供給するために急進的な環境主義を阻止する
28. 死刑を復活させ、治安を守る
29. 美しい連邦市民建築の推進
30. キャリア上級幹部の説明責任を回復する
31. 国家エネルギー緊急事態宣言
32. 外大陸棚のすべての地域を洋上風力発電のリースから一時的に撤退させ、風力発電プロジェクトに対する連邦政府のリースと許可の慣行を見直す
33. 米国の対外援助の再評価と再編成
34. 国家安全保障会議と小委員会の組織
35. 経済協力開発機構(Oecd)グローバル・タックス・ディール
36. アメリカ国民を侵略から守る
37. アラスカの並外れた資源ポテンシャルを解き放つ
38. 外国人テロリストおよびその他の国家安全保障と治39. 安の脅威から米国を守る
40. 国務長官へのアメリカ第一政策指令
41. 大統領の「政府効率化省」の設立と実施
42. ジェンダー・イデオロギーの過激主義から女性を守り、連邦政府に生物学的真実を取り戻す
43. 過激で無駄の多い政府プログラムと優遇措置の廃止
44. 連邦政府の雇用プロセスを改革し、政府サービスに実力を取り戻す
45. カルテルおよびその他の組織を外国テロ組織および特別指定グローバル・テロリストとして指定する
46. アメリカの偉大さを称える名称の回復
47. 侵略に対する州の保護を保証する
戦々恐々とする各国
このような大統領令だったが、日本の主要メディアの報道を見ると、日本をはじめ各国は戦々恐々としているのが分かる。日本では、トランプ政権が約束している高関税がどの程度のものになり、それが日本経済にどの程度の影響を与えるのか議論が集中している。
また、トランプ政権のプライオリティーは、中国の発展と拡大を抑止ことなので、東アジアでは中国を押さえ込むために日本などの同盟国との関係を強化するはずだという観測も多い。トランプ政権は、日本との軍事同盟を強化しつつ、牛肉・オレンジ問題など日本に貿易の自由化を強く迫った1980年代のレーガン政権と類似しているという。
トランプ政権は、同盟を強化しつつ、経済的には厳しく対応するということだ。