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日本で報道されないトランプ新政権の本質とは何か。基盤となる「アジェンダ47」「プロジェクト2025」の中身=高島康司

「生存圏の維持」とトランプの外交政策

では、そのようなトランプ政権の外交政策はどのようなものになるのだろうか?

一般的にはアメリカの国益を最優先に考える「一国主義」だと言われている。たしかにそれは間違いない。

アメリカの覇権を維持するために同盟国との結束を強め、中国やロシア、そしてイランの拡大を抑止するバイデン政権の外交政策とは顕著に異なる。バイデン政権では、同盟国との結束を図るための基盤として民主主義対専制主義という価値観の対立を全面に出し、同盟国との結束を強化するためには、譲歩と妥協をする用意があったのに対し、トランプ政権は、アメリカの国益を最優先し、同盟国との関係強化には無関心である。同盟国と言えどもアメリカの国益にならないと判断すると、容赦のない厳しい態度で接する。

これは間違いないにしても「一国主義」というだけでは、国益を最優先するというだけで、どのような世界秩序を構想しているのか、この政権の外交政策の基本理念は十分に捉えることはできない。それはどのような理念なのだろうか?

実はトランプ政権が追求しているのは、アメリカが政治経済的な強国として持続的に繁栄できる「生存圏の確保」である。トランプが所有権を主張しているグリーンランド、合併を提案しているカナダ、そしてメキシコ、パナマ運河などの地域と国々は、アメリカの「生存圏」の範囲である。これらの「生存圏」はアメリカ固有のものであり、そこに中国などが経済的に進出することは断固として拒否し、排除する。そのためには、グリーンランドやパナマ運河のように、アメリカが領有することもあり得る。

このように見ると、トランプ政権の外交政策の目標がより鮮明になる。それは、中国の拡大と成長を単に抑止することではない。トランプ政権が定めるアメリカの「生存圏」から中国などの国の排除なのである。

「生存圏」確保戦略と具体的な外交政策

ここで重要な点は、もしトランプ政権の外交政策の目標はアメリカが繁栄するための「生存圏の確保」ということであれば、この目標さえ達成されるなら、同盟国の利害を考慮しない可能性が高い。また、中国やロシアなどの大国に対して、アメリカの「生存圏」を確保する取引が成立するのであれば、同盟国の利害を犠牲にしても、中国やロシアの国益を尊重する方向に進む可能性もあるだろう。

いま日本の主要メディアでは、トランプ政権は中国の台湾進出を抑止するために、日本や韓国との軍事同盟を強化するはずだという論調が目立つが、必しもそのようにはならない可能性もある。中国に対してアメリカの「生存圏確保」の取引が成立してしまうと、トランプ政権は、台湾に対する中国の主張も一定程度容認するかもしれない。

Next: 戦争はある?国防のキーパーソンが語る米国の立ち位置

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