ユウ:利益を増やすんだから、普通にいっぱい売るとかですかね?
栫井:そう、売上を増やすということが間違いなくあります。じゃあトヨタはどれができそうかという話になります。コストを減らすことはできそうかな?
ユウ:難しいんじゃないですか?
栫井:たくさんはできないよね。自動車はすごく競争になってて、電気自動車なんかも作らないといけないし、そもそもギリギリのコストで車を作っています。
ユウ:そうですね、もう結構コストは減らしているイメージがありますね。
栫井:そうだよね。ここはちょっと難しいね。売上を増やすのはどうかな?
ユウ:売上を増やすのも難しいんじゃないでしょうか?もう自動車っていっぱいありますもんね。
栫井:そうなんだよね。トヨタは世界で1,000万台売ってるんだけど、自動車の台数が世界で増えてるかというとそんなことはなくて、中国だけは増えているけど中国の自動車は電気自動車になってて、トヨタは電気自動車市場に必ずしも入れてないので伸ばすのが難しくなっています。売上を増やすのも難しそうとなると、トヨタがROEを伸ばそうとすると資本の側で調整しなければならないということになります。
栫井:株主還元は、簡単ではないですがやろうと思えばできます。お金を株主に戻すということなので、手元に現金があればそれを渡せばいいわけです。
これはトヨタのバランスシートですが、現金預金が11兆円あります。もちろん日々やっていくためのお金や金融サービスのためのお金もありますが、単純にこの分の自己資本を減らすことはできます。しかも、配当が増えるということは、株主はどう思うかな?
ユウ:もらえるものが増えるから喜びますよね。
栫井:そうです。だからもしROEを20%にしようとするとおそらく株主還元は増えてくるだろうと思われます。となると株価はどうなるでしょうか。
ユウ:株価は上がりそうな感じがしますね。
栫井:そうです。本当にROE20%の目標を掲げるならおそらく株価は上がるでしょう。実際に今回のニュースを受けてトヨタの株価は上がりました。
低資本で高利益を目指す
栫井:もう1つ重要な観点として、さっき“ものを買わない”という話がありましたね。これもできる話だし、トヨタの経営において一番と言っていいほど今重要なポイントです。トヨタは自動車を作る会社なので、工場とかの“もの”が必要です。逆にそういった設備などの元手が要らないビジネスもあるよね?
ユウ:Webデザインとかですか?
栫井:そう、プログラミングとかのソフトウェア系の会社は元手が要らないからROEが高いんです。トヨタ自身も、車屋さんじゃなくて自動車のモビリティサービス会社になると言っています。自動車を作るだけではなく、“移動を提供する”ということです。トヨタは一時期エンジニアをたくさん雇ったことがあって、具体的にはまだ分からないけど、サブスクサービスみたいなものがどんどん出てくるんじゃないかと考えられます。既にやっている「KINTO」だったり、カーナビの開発もやっているという話もあるし、カーシェアなんかもやって、車関連のサービスをトータルでパッケージングしていくような会社になっていくのかなというところです。それができればROEは自ずと上がっていくでしょう。
トヨタの売上高利益率は8~10%といったところだけど、サービスは原価がかからないから基本的に利益率が高く、サービスが増えていくと売上高利益率が上がって結果的にROEも上がってくると考えられます。
トヨタのこの動きは、日本の会社にとって大きな革命になると思います。ROEを意識することで、より少ないお金でたくさん稼ぐということを考えるようになって、今持っているトヨタのブランドや知名度を活かしてさらに大きなサービスをできるようにもなると思います。ROEを上げることを考えると、ただの車屋さんというところから大きな発想の転換を起こすことができるわけです。
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