四半期ごとのコスト内訳を分析すると、最も大きな割合を占めるのは人件費です。
エンジニアの採用強化やCxO職などの高度人材の採用が進んだことで、人件費が増加しています。
第4四半期には利益率の改善が見込まれるものの、現時点では売上の伸びを上回るペースでコストが増加しており、これが株価に悪影響を与えていると考えられます。
出典:弁護士ドットコム 決算資料
<今後の成長性懸念>
次に、今後の成長性について考えます。
弁護士ドットコムの社長である元榮太一郎氏は、「リーガルブレイン構想」という成長戦略を打ち出しています。
これは、法務領域の課題をAIを活用して解決する構想です。
決算資料を見ると、ChatGPTのようなインターフェースで専門的な法律・法務の相談を行うサービスであることがわかります。
現時点では、すぐに収益化するかどうかは不透明ですが、長期的な成長ドライバーとして期待できるでしょう。
さらに、外部環境の変化として2026年に開始される民事裁判のIT化が挙げられます。
これにより、従来は紙や電話、対面で行われていた裁判に関する調査業務や日程調整がWeb上で完結できるようになります。
弁護士ドットコムは「弁護革命」や「判例秘書」といったリーガルテック領域のサービスを展開しているため、この外部環境の変化は追い風となる可能性が高いでしょう。
まとめ:投資するべきか?
ここまで見てきたように、足元の株価下落は主にコロナ禍の反動と直近の決算における減益が影響していると言えます。
しかし、成長性がないわけではありません。
AIの活用や外部環境の変化といった追い風があり、リーガルテック領域において圧倒的な存在感を持つ企業であることは間違いありません。
直近(2025年1月31日時点)のPERは約60倍と、市場の期待は依然として高い状況です。
第3四半期の決算次第では、さらなる株価下落の可能性も想定しておくべきでしょう。
一方で、長期的な視点では非常に興味深いポジショニングを確立しています。
以下の図を見ても分かる通り、市場は細分化されているものの、同社は各領域で強いプレゼンスを発揮しています。
さらに、周辺領域へのM&Aの可能性も期待されることから、リーガルテック市場の成長とともに事業拡大の余地があると考えられます。
この分野の需要は今後も高まり続けると予想されるため、投資対象として魅力を持つ企業だと言えるでしょう。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年1月31日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。