貿易が成長の大きな壁に
個人消費の下押しよりも大きな影響を及ぼしているのが、関税による貿易の縮小です。
ここまでのところは実際の関税による影響ではなく、関税賦課を先取りした輸入の前倒しが影響しているとみられます。アトランタ連銀の「GDPナウ」によれば、純輸出(外需)の成長寄与度がマイナス3.7%にものぼり、内需の拡大をすっかり飲み込んでしまった形です。
これは輸出、輸入両面でトランプ政権の影響が見られます。
輸出では欧州や中国の景気悪化で需要が減退していますが、欧州ではかつて経済の優等生とされたドイツの景気悪化が影響しています。ドイツの成長率は23年と24年が連続してマイナス成長となっています。EVなどで中国にのめりこみ過ぎた中で中国が不振に陥っています。フォルクスワーゲンが特に厳しい状況にあります。
ドイツを中心に欧州全体の需要が減速しているうえに、トランプ政権で腕力を振るっているイーロン・マスク氏がナチスやヒトラーを支持し、トランプ大統領の就任式で「ハイル・ヒトラー」のポーズをとったこともあり、欧州のテスラ社の工場には「ハイル・テスラ」といたずら書きされ、テスラの車の販売が急減しています。
また米国のトランプ大統領がNATOと距離を置き、欧州は自分で守れと突き放し、ウクライナ戦争では明らかにロシアの肩を持つ形になったために、欧州はロシアの脅威にさらされています。また極右、極左政党の躍進で政治も不安定になり、これらも経済の重石になっています。欧州経済の弱化にはトランプも加担し、米国のEU向け輸出を圧迫しています。
そして中国に対しても米国の政策対応が不透明で、もともと中国経済が弱いことも重なり、中国向け輸出は厳しい環境に置かれています。今後の関税強化を嫌って中国から引き揚げる米国企業が増えています。中国向け輸出も厳しい環境にあります。
それ以上に経済をかく乱しているのが、関税懸念で輸入が前倒しで増えていることです。
カナダ、メキシコは米国の輸入のトップを占めていますが、これらに25%の関税を課すということで、多くの企業は関税をかけられる前に前倒しで輸入を進めています。EUにも25%の関税をかけるといい、さらに鉄鋼や自動車、半導体、医薬品など、米国にとって重要な業界を守る関税が予定されています。
高率関税の対象が広範囲のため、関税がかかる前に少しでも多く輸入しておこうと、この1月は輸入が前月比11.9%増と大きく増えました。このため、貿易赤字も市場予想の1,166億ドルを大幅に上回る1,533ドルに達しました。これは前月より25.6%も大きくなり、国内生産が輸入品に食われるなどして外需のマイナスが成長の足かせとなりました。






