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トランプ革命の余波で米国が不況入り…日本ほか世界経済も共倒れの危機へ=高島康司

失業率の上昇

また、失業率も上昇している。2月の失業手当の新規申請件数は予想を大幅に上回る増加となり、アメリカの堅調な労働市場にひび割れが生じ始めている可能性を示す懸念すべき兆候であった。

2月26日に「米労働省」が発表した季節調整済みのデータによると、2月最終週の失業手当の申請件数は推定24万2,000件であった。これは前週の集計から2万2,000件の増加であり、エコノミストの予想22万件を大きく上回る数字である。

これは4ヶ月以上で最大の週ごとの失業申請の急増であり、レイオフの代理指標である週ごとの失業申請は12月初旬以来の高水準であることが「労働省」のデータから示されている。現在、全米で大規模なレイオフが起こっている。そのため、失業保険申請件数は今後数ヶ月間、急増を続けると予想される。

さらにこれに、「DOGE」が実施している連邦政府職員の大リストラが加わる。「DOGE」はすでに20万人の職員をリストラしているが、最終的には200万人を解雇するとしている。連邦政府全体の職員数は280万人なので、その約9割りがリストラされることになる。これが失業率をさらに悪化させることは言うまでもない。

トランプ高関税がもたらすもの、高インフレ

すでに米経済はこのような状況にある。そのような状況で、カナダとメキシコには25%、中国には追加の10%の高関税が適用になるのだ。それらは高止まりしているアメリカのインフレをさらに悪化させることになるのは間違いない。

中でも特にインフレの影響が懸念されてるのが、食料品の高騰である。それというのも、アメリカでは長い間、食料品の輸出は輸入をはるかに上回っていたが、今ではその逆が現実となっているからだ。

「農務省」が貿易見通し報告書で述べたところによると、アボカドからコーヒー、砂糖に至るまであらゆる輸入品が、米国の農業貿易赤字を今年、過去最高の490億ドルにまで押し上げる見通しである。同時に、過去数十年にわたり、米国で最も広く栽培されている作物は海外市場を失いつつある。かつては豊富な食糧供給を外交手段としていた国が、今や農業貿易赤字の常態化という未来に直面している。

すでに住宅であれ卵のパックであれ、幅広い指標で物価上昇が再び加速している。その多くは、パンデミックによる最初のインフレ急騰につながったのと同じ供給と需要の要因と労働市場の圧力と関係しているが、トランプ大統領が計画している関税で、物価がさらに上昇するのではないかという懸念を強めている。

高騰しているのは卵だけではない。牛肉の価格も上昇しており、全米各社の経営陣は最近の決算報告の電話会議で、それが大きな課題を生み出していると指摘している。

労働省の消費者物価指数によると、1月には牛肉と仔牛肉の価格が5.5%上昇し、家庭内消費の全カテゴリーの1.9%上昇を上回った。

「ウェルズ・ファーゴ・アグリフード・インスティテュート」のセクター・マネージャーであるコートニー・シュミットは、「FOXビジネス」に対し、牛肉価格の上昇は、安定した消費者需要と米国の牛肉生産の逼迫が原因であると語った。

そして、卵の価格はまったくもって馬鹿げたレベルにまで上昇している。「ウォルマート」のような店舗で卵の価格が史上最高値を記録し、買い物客は衝撃を受けている。朝食を買うためだけにローンが必要になるかもしれないと冗談を言う人もいれば、怒ったアメリカ人が商品を盗もうとして捕まるという事件も起きている。

卵価格の高騰は、鳥インフルエンザの蔓延により、産卵鶏の大量淘汰を余儀なくされたことが主な原因である。鶏が減れば卵の数も減り、品薄になれば価格も上昇する。

こうした状況で、カナダ、メキシコ、中国の輸入に高関税が適用されるのだ。アメリカの食料品輸入の16.6%がカナダ、23.2%がメキシコ、そして5.8%が中国からだ。高関税の適用で、食料品価格は10%から12%程度さらに上昇すると予想されている。

そしてインフレ率全体では、2.3%から3.6%押し上げ、総合的なインフレ率は5.7%から7.0%になると見込まれている。

このように、米国経済は綻びを見せ始めている。長期的な経済の低迷は、雪崩となる可能性が非常に高い。そして、今後数ヶ月で経済指標がさらに悪化することは目に見えている。

Next: 嵐は始まったばかり。世界経済も激震に巻き込まれていく…

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