fbpx

米国経済クラッシュは始まっている?日本では報道されない“危機の兆候”最新データ=高島康司

米国経済の実態を確認する

それでは日本ではあまり取り上げられることのない米国経済の実態を示す状況を、先週に引き続きざっと見て見よう。米国経済の想像を越えた悪さがはっきりと分かる。

まず、アメリカ人のインフレ調整後の債務負担は、世帯ベースでパンデミック前の水準をさらに超えて増加し始めている。消費者金融ウェブサイト、「WalletHub」がまとめたデータによると、2024年第4四半期の時点で、平均的な世帯のクレジットカード債務は、2009年以来初めて、インフレ調整後で1万ドルを超えた。

また、1月の自動車ローン延滞額が「過去30年間で最高水準」に達したこともわかった。米国の自動車所有者の自動車ローン延滞額は、今年初めに過去30年間で最高水準に達した。「フィッチ・レーティングス」によると、サブプライム自動車ローンを利用している借り手のローン支払いが60日以上延滞している割合は1月に6.56%に増加し、これは1994年にデータ収集が開始されて以来、最高水準となった。

さらに、債務状況の悪化は中間層以上の層にも及んでいる。2023年1月から2025年1月にかけて、年間15万ドル以上(約2,250万円以上)の収入がある人々の債務不履行率は60日から89日分に倍増した。これは、大手信用調査会社3社の独立合弁企業である「VantageScore」が作成した「CreditGauge」によるものだ。

そして、航空会社は第1四半期の利益と売上予測を削減しており、経済状況の悪化が旅行需要に影響を与えていると警告している。3月11日、「アメリカン航空」は今年最初の3か月間で1株当たり60セントから80セントの損失を計上する見込みだと発表した。これは、以前に予測されていた1株当たり20セントから40セントの損失よりも大きな損失である。

また、全米で小売販売が落ち込んでいる。ウィスコンシン州を拠点とし、全米で1,100以上の店舗を展開する小売大手の「コールズ」は、消費者の支出パターンの変化を理由に、2025年の売上予想を引き下げた。最新の予測では、「コールズ」は売上減少を5%から7%と予想を修正した。このニュースを受け、3月11日に同社の株価は26%以上急落した。

このような状況を受け、アメリカの中小企業を統括する「全米独立企業連盟(NFIB)」は、2月の「中小企業楽観指数」を発表した。この数値の上昇は、中小企業の景況感がよいことを表している。しかしそれは、2.1ポイント低下し、100.7となったと報告した。また「、NFIB」の「不確実性指数」は4ポイント上昇し、1986年から現在までの月次ベースで過去2番目に悪い104となった。

また、消費者心理も急速に低迷している。1月の消費者心理は3年半で最も落ち込み、小売売上高は約2年で最も減少、実質支出は2021年初頭以来最も速いペースで落ち込み、小売大手の「ウォルマート」は厳しい1年になるだろうと警告している。

こうした状況を見ると、米国経済が大規模な景気後退を回避できるのであれば、それはまさに経済の奇跡と言えるだろう。今後、すべてが順風満帆に進むと考える人は、ただの幻想を抱いているだけだと思う。

失業率の上昇、退職金を取り崩す

こうした状況の悪化に伴い、失業率も上昇している。イーロン・マスク率いる「連邦政府効率化省(DOGE)」は連邦政府職員の大規模な解雇を断行しているが、この政策の結果が失業率に現れてきたのだ。

再就職支援会社、「チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス」が10日に発表したデータによると、すでに発表された米国内の人員削減数は過去5年間で最高水準となった。これはパンデミックで経済が機能停止した時点の状況に並んでいる。

同社によると、米国の雇用主が発表したレイオフの数は17万2017件で、1月と比較して245%増、コロナ・パンデミックによる不確実性が高まった2020年7月以来、月間では最高となった。さらに、2009年の世界金融危機以来、2月としては最高を記録した。「リーマンショック」直後の2009年以来、2月の解雇の発表がこれほど多かったことはない。

日本ではまだ認識されていないかもしれないが、米国経済は重大な危機に直面しており、上の経済数値は、それを明確に反映している。

こうした中、生活のために自分の年金を取り崩すアメリカ人も増えている。アメリカの年金は、個人が投資会社と契約して資金を運用する「確定拠出年金(401k)」が一般的だが、緊急出費を賄うために「401kプラン」から早期に自分の資金を引き出すケースが増えているのだ。

「401kプラン」口座を持つ約500万人のデータを調査した「バンガード・グループ」によると、昨年、口座保有者の4.8%が緊急出費のための引き出しを行ったが、これは2023年の3.6%から増加している。

Next: 経済崩壊はこれから?「FRB」の解体で適切な対抗処置がとれなくなる…

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー