この傾向は当面変わりそうにありません。
北京政府の経済対策が、今の中国の病状に相応しいものとなっていないためで、中国の資産デフレに改善が見込めません。北京政府に経済の専門家がいなくなり、経済の不振が続く間、人民元の価値も下落が見込まれます。
中国では資本取引が規制され、通貨の売買も制約されるため、比較的容易に買える金への需要が高まりやすく、その規模はほかの国に比べるとより大きくなります。
そしてトランプ政権が今後中国に対して、北京政府が行っている様々な「非関税障壁」に対して関税賦課で対処する可能性があります。国民が自国通貨や政府に信頼が置けない状況が続けば、中国の金買いは続くとみられます。
トランプは平和の使者失敗
もう1つが地政学リスクの再燃です。
トランプ大統領の登場はイスラエル戦争やウクライナ戦争を早期に解決する期待を持たせました。ウクライナ戦争については就任後24時間で片付くと豪語していました。
ところが、いずれも米国による停戦交渉がうまくいっていません。
イスラエルは停戦中にもかかわらずまたガザへの大規模空爆を開始し、イスラエルとハマスの停戦は崩れました。それどころか、米国はイランの支援を背景とするイエメンの武装組織フーシ派への空爆を行い、イランを刺激しています。米国が作り過ぎた武器の在庫整理に使ったとの見方もありますが、イスラエルと米国連合によるイラン政権の打倒の動きともとられ、新たに地政学リスクが高まっています。
また3月18日のトランプ・プーチンの電話会談も、2時間かけたといいながら、トランプ大統領の狙い通りに行かず、プーチン大統領は米国の提案を拒否しました。これに対して、トランプ大統領は思い通りに行かないことへの不満から、ロシアのエネルギー部門にも金融制裁を科すことを指示しました。
部分停戦もかなわず、ウクライナは改めてロシアへの抗戦を進めるとしています。少なくともトランプ大統領によるウクライナ戦争の終結は見えなくなりました。東欧のみならず、欧州全体にとってもロシアの脅威が続くことになります。
戦乱を生き延びるうえで、紙幣より金が信用されます。






