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トランプ関税で米国内も大混乱…始まった深刻な不況と「ふさわしくない市民」の排除=高島康司

その対象になっているのは、合法的な移民の許可証である「グリーンカード」の保有者だ。彼らには、選挙権を除いて、米国民に保障されているすべての権利が与えられている。しかし、「移民局」によって「グリーンカード」が無効化され、元々の出身国に強制送還されてしまうケースが一気に増えている。

「グリーンカード」の保有者は選挙権を除いた米国民並の権利が保障されているので、米国への出入国はまったく自由に行える。ところが、一度出国した「グリーンカード」保有者が帰国して米国に入国しようとすると、「グリーンカード」を取り上げられて無効が宣言され、強制送還されてしまう。送還される理由は、説明されないことが多い。

また、「グリーンカード」の保有者ばかりではなく、市民権を持つ外国出身の米国民も強制送還の対象になることもある。アメリカに帰化して50年経つ64歳の女性は、フィリッピン旅行から帰国後、「移民局」に拘束されて強制退去になっている。

さらに、一般の旅行者もアメリカへの入国が認められないケースも多い。アメリカで開催される学会に出席するためにやってきたフランス人の研究者には退去勧告が出て入国は認められなかった。また、カナダ人の一般の旅行者は「移民局」の収容施設に19日間拘束された後、退去が命じられた。このようなケースが毎日山ほど報告されている。ドイツ、カナダ、フィンランドは、アメリカへの旅行者が恣意的に拘束される恐れがあるとして、渡航勧告を出した。前例のないことである。

「TikTok」のようなSNSには、現状を報告し、助けを求める米国民や合法移民、そして旅行者の声であふれている。大抵「移民局」はパソコンとスマホを没収するので、没収される前に証拠として動画を撮影し、それを家族や友人に依頼して投稿してもらっているようだ。

この際限のない強制退去の理由のひとつになっているのが、押収されたパソコンやスマホから「移民局」が回収したデータだ。電子メールやSNSへの投稿、また保存されている文書などに、トランプ政権を批判する書き込みが見つかった場合、米国民を脅かす好ましくない侵略者として認定され、排除される。

こうした状況に対し、出入国に詳しい弁護士は「二度とアメリカには入れなくなるので、グリーンカードの保有者はアメリカを出国してはならない。また、これからアメリカを訪問しようとしている旅行者は、いまはこの国には来てはならない」と注意している。

イスラエルに抗議した学生の収監と放逐

さらにこのような動きとともに、イスラエルのガザ攻撃に抗議した学生の収容施設への収監や、国外退去も進んでいる。ガザ戦争は全米各地の大学を中心に、イスラエルに対する広範な抗議運動が起こった。多くの学生が参加した。

しかしトランプ政権は、抗議運動を容認する姿勢を見せた大学への補助金を停止し、運動に参加した学生をしらみつぶしに調べ上げ、対処している。もし抗議運動に参加した学生が外国出身だった場合、長期滞在ビザを持っていたとしても、不法移民の収容施設に強制的に収監されている。収監されている人々の中には、外国出身だが、アメリカに帰化した米国市民もいるようだ。これも米国内では、相当な反発を引き起こしている。

不況入りが確実になりつつあるアメリカ

いまこのような状況なので、トランプ政権に対する抗議が殺到している。抗議はトランプの支持者の間にも広がり、自分がトランプに投票したことを後悔する動画もSNSに多くなっている。トランプの支持層は、「ペンテコステ派」や「福音派」など、トランプを神から選ばれた人物として信奉する宗教右派に、これから限られてくるのかもしれない。

トランプ政権に対するこうした反発をさらに助長しているのが、米経済の不況入り懸念である。トランプ政権の高関税の導入により、高止まりしていた米国内の物価はさらに高くなり、国内消費を縮小させていることが背景の一つになっている。「アトランタ連銀」の「GDPNow」が予測する−2.8%という水準までGDPが一気に落ち込む可能性も大きくなっている。代表的な数値を見てみよう。

Next: すでに深刻な不況が始まっている?蓄積していく国民の怒り…

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