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もはや中国「レアアース外交」は通用せず。日本が深海採掘で世界2位の供給国に躍り出る日=勝又壽良

年12万トン世界2位

すでに、水深6,000メートルに存在するレアアース泥について、自律型無人潜水機(AUV)「しんりゅう6000」で資源量の調査に成功している。22年には水深2470メートルで海底堆積物の揚泥に世界で初めて成功。レアアースの環境影響評価では、海底観測装置「江戸っ子1号」を活用して、2年間にわたって生態・環境データを収集している。江戸っ子1号は岡本硝子のほか、東京・千葉の中小企業連合が中心となって開発してきた経緯がある。

中小企業が、今回の生態・環境データを収集に協力するなど成果を上げている。このように、民間企業が南鳥島の深海レアアース採掘や精錬の事業でも共同作業に加わっている。

<(1)海洋掘削・海底資源開発関連>

日本海洋掘削(非上場、ENEOSグループ傘下)、
三井海洋開発
東洋エンジニアリング

<(2)レアアース関連素材・製造>

信越化学工業
TDK

<(3)その他コンソーシアム参加企業>

IHI:海洋掘削技術やエンジニアリング
AGC:レアアース関連素材の加工技術
鹿島建設:海洋インフラ構築
小松製作所:採掘機械の提供
ENEOSホールディングス:エネルギー供給と日本海洋掘削の親会社
三井金属鉱業:鉱物資源処理技術

これら企業メンバーをみると、いずれも日本を代表する企業である。「技術の粋」を集めて、この国家プロジェクト遂行に立ち上がっていることがわかる。既存技術を活用して今後、27年までの2年という異例の速さで国産化・商業化できれば、日本の経済安全保障上のメリットは極めて大きくなる。

レアアース鉱山レベルの生産量世界ランキング(2022年)は、次の通りである。

1位:中国 21.00万トン
2位:米国 4.25万トン
3位:豪州 1.80万トン
4位:ミャンマー 1.20万トン
5位:タイ 0.71万トン
出所:米国地質調査所(USGS)

レアアースにおける中国の存在は、圧倒的であることがわかる。日本が南鳥島で前述のように、27年1月に1日当たり約350トンの採鉱、揚泥試験に成功すると、年間365日の操業を仮定すれば、年間12万7,750トンになる。1位中国の21万トンの6割近くになる計算になる。

この試算からも分るように、レアアースにおける日本の存在が、クローズアップされるはずだ。

ブラジルも主要生産国

海外ではブラジルが今、レアアースの主要生産国になろうとしている。

米地質調査所(USGS)によると、ブラジルは中国に次ぐ世界第2位のレアアース埋蔵量(約2,100万トン)を誇る。これは世界の確認埋蔵量の5分の1超を占め、米国の10倍超に相当する。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月26日付)が報じた。

カナダのレアアース精錬会社アクララ・リソーシズは、米国に建設予定の精製工場へ向けたレアアース鉱山をブラジルに開設する。カナダの企業が、ブラジルでレアアース鉱山を開発し、米国で精錬するという「多国籍企業」である。

アクララ・リソーシズは、ブラジルのレアアース採掘・加工コストが、中国の約3倍と推定する。ブラジルでは、中国と違いレアアース採掘・加工で環境保全の規制が厳しいことが理由だ。これが、コストを引上げている。中国の低コストは、環境に対して野放図な結果を示している。

Next: 上がる採掘コスト。中国の競争力はどんどん剥がれていく…

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