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増えた消費税収4兆円はどこへ消える?社会保障費は17.6兆円も不足…国民負担「3重苦+物価高」の実態=矢口新

消費税収が過去最高の25兆円に達した。税率10%が通年で適用された2020年度から4兆円の増収だが、その使い道を巡って政府内で綱引きが起きている。「消費税は社会保障の財源」とされるが、実際には社会保障費全体に対して大きく不足しており、医療分野への配分や診療報酬改定の扱いも不透明なままだ。国民は、消費税・保険料・国債による将来負担、さらに物価高という“4重苦”に直面している。このまま消費税頼みの制度を続ければ、社会保障はかろうじて維持されても、生活のほうがもたないのではないか。税収増の陰にある構造的な限界が、改めて浮き彫りになっている。(『 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー 』矢口新)

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※本記事は矢口新さんのメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2025年7月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:矢口新(やぐち あらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

消費税収「4兆円」増加

消費税率が10%になった効果が通年で出た初年度(20年度)の消費税収は、21兆円だった。一方、財務省が7月2日に発表した決算概要によると、24年度は25兆円に達した。

この4兆円の増収分の使い道が、政府のなかで争点となっているらしい。

「消費税は社会保障財源」のはずなのだが、例えば、「医療分野には回せるはず」だとして、年末の2026年度診療報酬改定に向けた争点の1つなのだそうだ。

社会保障費はそれ以上に増えている

とはいえ、消費税収が増えても、社会保障費の伸びには追いついていない。

財務省の資料では社会保障費の2024年度の国庫負担は37.7兆円で、予定する消費税収24.9兆円のうち自治体に回るお金を除くと20.1兆円と、17.6兆円も不足する。

仮に、増収分を医療分野に回し診療報酬を大幅に引き上げると、社会保障費の伸びが加速して、ますます不足分が増える可能性もある。

国民負担増のスパイラルで「4重苦」へ

そうなれば、社会保険料の引き上げが加速し、不足分の財源となる国債発行も加速することになる。

消費税を支払ったのが消費者であることを鑑みれば、これは3重苦(社会保険料、国債負担、消費税)となることを意味する。

ここで、21兆円が25兆円になったということは、4年間で19%伸びたことになる。一方、内閣府発表の家計実質最終消費支出は同時期に6.3%しか伸びていない。また、総務省発表の消費者物価指数は8.4%の伸びだ。

税収の伸びの半分近くはインフレによる嵩上げだと見ていていいだろう。つまり、国民負担は3重苦+物価高となる。生活が苦しくなった実感は、データからも伺える。

ちなみに、2024年度の名目GDPにおける家計最終消費支出は325兆円だった。ここ全部に消費税率10%を適用すれば、消費税収は32.5兆円となる。これは多いだろうか、少ないだろうか?

社会保障費の国庫負担を37.7兆円とすれば、これでも足りない。

Next: 消費税の欠陥が露呈。社会保障制度を守って、国民生活はボロボロに…

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