企業の実態を深く知る「ROICツリー」の分析手法
ROICが優れているのは、単に数字の良し悪しを判断するだけでなく、その企業の何が一体強いのかを分解し、企業の実態を全体像として把握できる点です。この分析手法を「ROICツリー」と呼びます。
ROICの計算式(みなし税引後営業利益 ÷ 投下資本)は、以下のように分解することができます。
ROIC = 営業利益率 × 投下資本回転率
- 営業利益率(売上高営業利益率)
- 投下資本回転率
・売上高に占める営業利益の割合を示します。
・さらに、売上高原価率や売上高販管費率(研究開発費、人件費、広告宣伝費など)に分解されます。
・売上高 ÷ 投下資本で計算されます。
・投じた金額(資本)に対し、年間で何周分の売上を上げられたかを示します。
・さらに、運転資本回転率(売上債権、棚卸資産、仕入資産)と固定資産回転率(無形資産、有形固定資産)に分解されます。
<分析の応用例:商社のビジネスモデル>
例えば、商社(卸売業など)の業界は、一般的に営業利益率が非常に低い傾向にあります。しかし、商社は大量のものを仕入れ、薄利多売で販売するビジネスモデルのため、「投下資本をめちゃくちゃ回す」こと(高い投下資本回転率)によって、結果的に低い営業利益率であってもROICを高く保つことができるのです。
この分解を見ることで、企業活動は「いかにそれぞれの項目を工夫して最終的にROICを高めるか」に集約されるべきであることが理解できます。企業は、営業利益率を上げる戦略(例:自社製品開発)や、投下資本回転率を上げる戦略(例:顧客を増やし回転を速める)の両方を取ることが可能だとわかります。
ROICを重視する3つの理由
ROICを分解・分析することには、以下の3つの大きな強みがあります。
- 強みの源泉に直結する
- ビジネスモデルを把握できる
- 未来の企業価値を決める
・ROICツリーで分解することで、他の企業と比べて高い部分(その企業の強み)がどこにあるのかを見抜くことができます。
・逆に弱い部分を認識することで、その改善が企業価値向上に向けた重要なKpI(最重要業績評価指標)となります。
・ROICツリーがあれば、その企業が一体どうやって儲けているのかというビジネスモデルをすぐに把握できます。
・ROICは、企業価値評価における割引率であるWACC(ワック)と一緒に見ることによって、その企業の理論価値を計算するために使われます。
・【ROIC−WACC】がプラスになるかどうかで、その企業が価値を産んでいるかどうかが判断できるという、究極的に分かりやすい基準があります。多くの機関投資家がこの基準に基づいて企業価値を計算しています。
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