■紀文食品<2933>の中期経営計画
3. 基本戦略
以下、中期経営計画の核として、引き続き鋭意推進している基本戦略の詳細である。
(1) 成長戦略の推進と新たな価値創造
a) 国内食品事業
国内食品事業では、既存領域の拡大を目指して、好調カテゴリーの生産ライン増強を図る。収益が秋冬に偏る季節性の緩和も目指しており、即食・簡便ニーズに応えたバータイプ商品や独自技術を生かしたキャラクター商品、麺状商品などの開発を促進する。また、買い置き需要や食品ロス対策でニーズが広がるレトルト商品などロングライフ商品も拡充する。さらに、高タンパク・低脂質・ロカボ(糖質オフ)・減塩など商品の特徴を健康志向とおいしさの両面から訴求し、「紀文=健康」のイメージを確立する。日本の伝統文化である正月やおせち料理の保護・継承につながるよう、正月商戦にも引き続き注力する。商事部門では、農畜水産品の商事販売やスリミ製品・健康志向商材の業務用販売などチャネル開発の強化を図る。さらに、同社グループが有する様々な経営資源を活用して新規分野に挑戦し、「総合食品グループ」へ向けて事業領域の拡大を推進する。
b) 海外食品事業
海外食品事業では、主力で強みのあるスリミ製品を中心とした日本食をコアに、加工食品事業やトレーディング事業、直販事業を強化する。加えて、展開エリアの市場特性や市場ニーズに適した戦略を推進することで、持続的な成長を図る。製造拠点のあるタイでは、加工食品事業に特化し、生産効率の向上や新たな原材料調達、ライン増設、MSC認証※の取得、カニカマの一部生産工程の自働化・省人化などにより製造能力を強化するとともに、タイ国内のシェア上昇と輸出販路の拡大をねらう。アジア・オセアニア地域では、カニカマなどコスト優位性のあるスリミ製品を強化する一方、地域それぞれの食シーンに合わせてチーちく(R)を展開、また納豆や甘味などの日本食材の拡販にも注力する。インドやインドネシアなど成長著しいエリアでは、トレーディング事業に加え直営飲食店やECによる直販事業を強化する。
※ MSC(Marine Stewardship Council)認証:水産資源や環境に配慮し、適切に管理された持続可能な漁業に関する認証。
北米・欧州では、カニカマで品質と価格をバランスした製品と価格指向の製品を2面展開するとともに、中南米への販路も拡大、麺状商品「Healthy Noodle」の米系スーパーへの導入を促進する。日本食のトレーディング事業で紀文ブランドの認知拡大、農畜産品の輸出拡大、新アイテムの発掘などを強化、直販事業では「Healthy Noodle」でECに参入する。中国では、カニカマで既存顧客を深掘りするとともに業務用の販路拡大を進め、新たに「Healthy Noodle」を売り込む。また、健康価値を高める食品の輸入販売や中国産食材の輸出などトレーディング事業に注力するとともに、ECによる直販事業への取り組みを強化する。
c) 食品関連事業
同社のチルド温度帯の共同配送や専用センター網に対して強まるニーズを受け、チルド物流ネットワークの拠点を拡大・充実して運用力を強化するとともに、長年蓄積してきた運用ノウハウを活用して物流の効率化を進める。これにより、既存顧客の深掘りと新規顧客の開拓を促進し、物流事業の成長につなげる方針である。また、チルド以外の温度帯や流通加工業務の強化など業容の拡大も図る。さらに、生体認証や品質検査管理など、紀文グループの独自ノウハウが詰まったシステム製品の外販を推進し、情報事業の育成を図る。
(2) 資本効率の改善
資本効率の改善では、代表的指標であるROICを改善する考えである。このため、売上高の拡大、原材料調達コストの低減、製品やサービス構成の最適化、DXによる業務効率化と生産性向上により収益性を引き上げるとともに、自己資本比率の向上や資産・負債の圧縮による財務体質の強化を図る。この結果、中期経営計画期間中に営業キャッシュ・フローを稼ぎ出し、生産能力増強や新製品開発など成長投資、供給機能再編投資、株主還元、借入金圧縮に充てる計画である。新規事業に関しては、M&Aを検討する可能性もある。
(3) 経営基盤の整備
経営基盤の整備では、ステークホルダー全体のWell-beingに貢献するため、グループミッションである「世の中を“すこやかなおいしさ”で満たしつづける。」持続可能な社会の実現を目指し、サステナビリティ経営を推進する方針である。これまでもCO2排出量やプラスチック使用量の削減などの実績があるが、さらに経営の礎となるコーポレート・ガバナンスや研究開発、人的資本、安全・安心の強化に取り組み、成長を持続できる企業体質へと変革する考えである。特に人的資本の充実は成長に不可欠なため、挑戦意欲の高い活力のある社員を育成していく方針である。また、資本コストや株価を意識した経営も実践し、企業価値の向上につなげる考えである。
■株主還元策
目標配当性向を上回るが、配当は前年並みを予定
1. 配当政策
同社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の1つと考えており、将来の事業展開と財務体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、業績及び将来の見通しを総合的に勘案して、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としている。中期経営計画では、同社が目指す「ありたい姿」の具現化に向け、成長分野への投資や自己資本比率の改善などにも優先して取り組むため、連結配当性向20%を目標水準に事業成長に合わせた利益還元に努める方針とした。2026年3月期の1株当たり配当金については、こうした方針に基づく一方、業績修正した点を考慮して期初予想から3.5円減配し、一時的に目標を上回る配当性向となるが、前期と同じ20.0円(配当性向29.6%)を予定している。
同社の商品詰合せを贈呈
2. 株主優待制度
同社は株主優待制度を有しており、9月30日現在の株主名簿に記載または記録された株主を対象に、保有株式数に応じて同社の商品詰合せを贈呈している。同社株式を300株(3単元)以上1,000株(10単元)未満保有する株主には同社商品詰合せ(約3,500円相当)を11月中旬~下旬に発送、1,000株(10単元)以上保有する株主には同社商品詰合せ(約6,000円相当)または同社おせち商品詰合せ(約6,000円相当)を12月中旬(おせち商品詰合せは12月下旬)に発送することになっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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