どう見る、任天堂のADR株価急落
市場はもうポケモン一色でしたが、話題の任天堂が金曜夜間に業績への影響を否定する開示。それを受けてPTSは止まりましたが、アメリカのADRでは日本円換算で金曜終値から13%程度安い水準となっています。
まあ任天堂に関しては遅かれ早かれ業績期待に対する淡い夢から覚める第一上昇波動の終了は時間の問題でした。
第一波が終わればしばらく現実を見るモードになると思います。それは具体的には決算を受けて、経営陣の感触を聞き出そうとアナリスト達が色々質問し、それが会社のHPや証券各社のレポートなどで色々書かれ、投資家の目線が理想から現実に引き戻されるモードです。
押し目と『ファイアーエムブレム』
ただ私は押す場面は第二上昇波、つまり今度は「業績への影響度を冷静に見極めた上で投資家が投資してくる新波動」に向けた良い押し目だと思います。
と言うのも、任天堂はポケモンだけではないからです。その他にも『マリオ』『どうぶつの森』『ファイアーエムブレム』『ゼルダの伝説』といった、超人気IPを豊富に抱えています。今回の成功で学習したことを次のシリーズに使うことができます。
特に『ファイアーエムブレム』は今ここにきてアメリカで人気だそうで、私も好きなシリーズなんですけど、これはかなり期待が持てます。
ちなみに『ファイアーエムブレム』と『どうぶつの森』のスマホゲームも秋に出すと既に発表済みです。これらは今回のNianticが開発した『ポケモンGO』とは異なり完全な自社製作のゲームなので、丸々売上が自社のものになります(厳密には運営はDeNA<2432>が行うので、いくらか取られます)。
ですから正直ガンホーのパズドラの比ではないんですね。例え『ポケモンGO』のブームが一旦下火になっても、次のタイトルでまた大ヒットを出すことができます。そして例えば『ポケモン』で育てたキャラを『どうぶつの森』で使うことができる、などといったキャンペーンを張ることで、いくらでもユーザーを任天堂の手のひらから外に出さず、回遊させることができます。
「社会現象」
そもそも『ポケモンGO』の配信が始まってこの2日間、町は夏休みということもあってあちらを見てもこちらを見ても、スマホ片手に歩いている老若男女が目立ちます。今までスマホはポケットに入れて歩くものでしたし、そもそも私の地元のような田舎では車ばかり走っていて歩行者はまばらですが、一気に歩行者が増えました。
いくら『パズドラ』が大ブレイクしたといっても、こういう姿や現象を目撃したことがあったでしょうか?地元の公園や神社なんて、いまだかつてないほどの人が集まっていました。
これ自体が巨大な広告塔であり、パワーなんです。下手すると普通にスマホを見ている人ですら「ポケモンやってるんじゃね?」と思うほど。ユーザーが増えれば増えるほど課金も大きな威力を発揮します(より他人を凌駕した時の快感が得られるため)。
これらの行く末をアナリストは元より、任天堂自身が果たして全て把握できるかどうかは甚だ疑問です。最初はバイオ株同様、期待値が先行するのは当然ですし、そもそもそれが株式投資の醍醐味とも言えます。
不確定要素は新型ゲーム機NXと為替レート
一方、新型ゲーム機NXはまだ未知数です。もっと言えばポケモンも未知数でしたが、実際こうして結果を出したので株価材料になりました。良いように転がれば、これが今度のNXに対する期待感にも結び付いて、さらに相乗効果を出すかもしれない。それが時価総額が1兆円以上増加した裏付けになってきます。
ただ任天堂の業績面に目が向き始めた時にどうしても気になるのが為替です。任天堂は売上の7割が海外で、また海外資産の多い会社なので(しかもヘッジをしない)、為替変動が大きく影響してくる超外需企業です。1円の円高で数十億円の為替差損に繋がると言われています。
ですから足元円安に急速に振れたことも強烈な追い風になり、さすがに106円台まできたところで一段の上昇は難しそうですが、為替もまた夏以降落ち着いてきたら追い風になると思います。
逆に言えば円高がドンドン進んでしまうと、いかにポケモンがヒットしようが苦しいということにもなりそうです。
そう考えると、今回の任天堂のリリースは27日の決算発表時、むしろ円高による下方修正を行うための布石なのかもしれませんね。そこが最後の押し目になるのかもしれません。個人的には任天堂も良いですが、やはり周辺株を狙っていくパターンが一番無難と思っています。