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ソフトバンク孫正義社長の超ハイレバ「ヘッジファンド流」経営術=矢口新

ソフトバンクグループの孫正義氏は日本が生んだ、世界最大級のヘッジファンドマネージャーと言えるのではないか?大したリスクテイカーだ。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』)

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

ソフトバンクは日本発、世界最大級のヘッジファンドだ

3.4兆円買収劇

ソフトバンクの経営は「レバレッジ経営」と呼ばれている。レバレッジとは、元手資金を借入金により膨らませ、梃(てこ:レバレッジ)の原理で、収益を膨らませようとするものだ。企業の場合の元手資金とは自己資本(純資産)、借入金は有利子負債で知れる。

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ソフトバンクの2016年3月末時点の有利子負債は11兆9224億円。これは自己資本の3.4倍、売上高の1.3倍、営業利益の11.9倍に当たる。

ソフトバンクグループは7月18日、英半導体設計会社のARMホールディングスの全株式を現金で取得することで合意したと発表した。総額は約240億ポンド(約3兆3600億円)となる。ARMの1株当たりの取得額は17ポンドと、15日の終値11.89ポンドに約43%上乗せした水準で、全株式14億1200万株を取得、完全子会社化する。ソフトバンクはさまざまな機器をインターネットでつなぐ時代を見据え、この買収でIoT技術の世界的な有力企業を傘下に納めることになる。

ソフトバンクは買収資金調達にあたり、みずほ銀行とブリッジローンとして最大1兆円の借入契約を締結。残額は手元資金で賄うとした。買収は9月末までに完了する見込みだとしている。ソフトバンクグループは2016年3月末時点で2.5兆円の現預金を抱え、その後のアリババ株売却やフィンランドのスーパーセルの売却などで約2兆円を得ていた。

出典:ソフトバンク:半導体の英ARMを3.3兆円で買収-同社最大規模 – Bloomberg

NTTドコモとの比較で際だつ特異性

これがどれほどのものか、同業種のNTTドコモと比較すると、この異常なレベルが際立つ。参照図では、数値が大きい方に矢印を向けた。利益と称されるものがいくつかあって、それぞれに意味があるのだが、最終利益として、配当原資となったり、PER、PBR、ROEなどの算出に使われるのは、当期利益だ。これはドコモがソフトバンクを15%以上上回っている。

ソフトバンクとNTTドコモの連結決算比較

ソフトバンクとNTTドコモの連結決算比較

ここで、ドコモはソフトバンクを当期利益で上回っているのに、一株益では大きく下回り、ROEでも負けている。これは、ドコモの方が、発行済み株式数が多く、自己資本が充実しているためだ。更に有利子負債が圧倒的に少ないので、総資産に占める純資産(自己資本)が多く、自己資本比率では圧倒している。

お気付きだろうか?自己資本が少なければ、収益力が劣っていてもROEが上がる。ROE(Return On Equity)とは、当期利益を自己資本で割ったものなので、高めるには当期利益を増やすか、自己資本を減らせばいいからだ。つまり、健全経営を志向すればROEは下がる。

JPX日経400指数での銘柄選抜では、ROEが良ければ加点されるが、収益力が低くても、健全性を下げれば、ROEは上がる。案外な盲点だ。

Next: 株価はドコモに軍配/日英政府にとってありがたい?ポンド大量買い

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