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勝ちパターンに入ったジョージ・ソロス「人民元売り崩し」の勝算は?=東条雅彦

今回は世界3大投資家の1人、ジョージ・ソロスの過去の投資行動を検証しながら、「なぜ今ソロスは中国の通貨・人民元に目をつけているのか?」について解説していきます。

イギリスのまさかのEU離脱で、市場は大混乱に陥りました。その後やや落ち着きを取り戻したものの、円高の流れはかなり強烈で1ドル100円付近で推移しています。そのような状況にも関わらずソロスはイギリスのEU離脱についてほとんどスルー状態。やはり本命は「中国経済」なのでしょう。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

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ジョージ・ソロスは、なぜ人民元を売り崩そうとしているのか

英EU離脱でポンドを売っていなかったソロス

すでにご存知の方も多いかと思いますが、ジョージ・ソロスは、英国の国民投票でEU離脱が決まった6月23日に、ポンド売りを実施していませんでした。

米著名投資家のジョージ・ソロス氏は、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の直前に、ポンド安を見込んだ投機取引は行っていなかった。同氏のスポークスマンが明らかにした。

出典:ソロス氏、英国民投票前にポンド安見込んだ取引せず=広報担当者 – ロイター

ソロスは「イングランド銀行を潰した男」という異名を取っています。1992年にポンドを空売りして、15億ドルを儲けました。

この時の印象が強かったため、今回ポンド売りを見送ったことを、市場は意外だと受け取ったようです。

しかし、これは意外なことでも何でもありません。近年、慈善活動などに力を入れていたソロスがトレーディングの現場に戻ってきたのは、「中国の人民元を売るため」です。これはハッキリと断言しても良いと思います。

なぜなら、そもそもソロスは、「半固定相場」の通貨を売り崩して儲けるという手法で富を築いてきたからです。

今、英国のポンドは完全な「変動相場」です。そのため、今回は手を出さなかったのです。

「固定相場」はどういう方法で実現しているのか?

半固定相場制を説明する前に、まず前提となる「固定相場制」について説明します。

固定相場制とは、通貨の交換レートを一定に保っている相場のことを意味します。日本も1971年までは1ドル=360円の固定相場制を採用していました。このような交換レートを一定に保つ方法として、次の2通りがあります。

  • <方法その1>中央銀行が要求される為替取引をすべて受け入れる
  • <方法その2>資金の移動を規制し、固定相場になるようにする

<方法その1>の具体例

当時の日本は<方法その1>を採用していました。

将来的な円切り上げ(円高)を見込んだドルからの円買いに応えて、日銀が「円売りドル買い」介入をしていました。

円を買いたい人が増えると、円高になってしまいます。しかし円が買われる量と同じだけのドルを買えば、価格は動きません。

1ドル=360円という固定相場は、日銀の介入により人為的に作っていたのです。

<方法その2>の具体例

中国は2005年7月までドルに対する固定相場制を採用していました。その時、中国は資金の移動を規制していました。

「中国の元を買いたい!」という人が、「中国の元を売りたい!」という人よりも多くなってしまうと、元の価格が上がってしまいます。

そこで、中国政府は「元を買いたい!」という人が多くなった場合、単純に売らなかったのです。反対の場合でも同じです。売りたい人が多くなった場合も、売らせません。

<方法その1>では、中央銀行が反対売買を行い、売買量を均衡させます。
<方法その2>では、売買量を規制することで価格を固定化させます。

どちらの方法であっても、需要と供給を無理やり均衡状態に持っていくのがポイントです。参考までにコチラの需要供給曲線をご覧ください。

需要が増える/供給が減る → 価格が上がる
需要が減る/供給が増える → 価格が下がる

中央銀行や政府が無理やり需要と供給を調整すると、確かに価格は安定します。

しかし、これはアダム・スミスの「神の見えざる手」に反する行為のため、人為的な相場(=固定相場制)は永久には続きません

Next: 天才・ソロスはいつも「半固定相場」を売り崩して儲けてきた

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