理由その4:若者の消費パターンの変化
構造的な消費抑制要因のもう一つは、若者世代の消費行動が変わってきていることです。
ざっくり言えば、「所有型消費」から「体験型消費」に変わってきています。これは日本だけでなく、米国でも顕著にみられる現象です。共通していることは、彼らは生まれて物心がついて以来、所得が増えるという状況を知らずに育っています。
高度成長期のように、所得は毎年増えていくものと思えば、今借金をしてでも車やオーディオを買い、さらには家を建てようという気になります。当時は所有が豊かさの要素と考えられていました。
ところが将来所得が増える保証がなく、下手をすれば職を失って所得を維持できなくなるリスクがある中では、借金をしてまで物を買うことは大きなリスクになります。
そこで車が必要な時にはシェアして使えばよく、車を買う必要はないと考えます。そもそも、年収170万円の非正規雇用では車を買う余裕もありません。
米国でも日本でも、若者世代を中心に、「シェアリング・エコノミー」が広がりつつあります。物を買って所有するのではなく、必要な時にシェアしたり借りたりして「体験」できればよいとする考え方が広がっているのです。
最近では若者の間でも購入するなら新品でなく、中古品を安く手に入れる風潮が強まり、スマホの普及で簡単にこれらを手にすることができるようになりました。ブランド品ばかりか、普段着の衣類まで中古品市場が広がっています。
中古品の拡大は、仲介手数料以外はGDP上の付加価値生産にはなりません。皆が中古品で済ませる間は、消費者は満足しても、生産や所得、GDPを増やさなくなります。
体験型消費の典型は『ポケモンGO』です。8月はスマホを眺めつつ、街を練り歩く若者があちこちで観察され、一部では交通渋滞を招くほどでした。8月の家計調査でも、「通信費」が消費を0.3%押し上げていましたが、その分、所有型の消費は一層抑制されます。
この若者世代の体験型消費の拡大が、消費全体を抑制する形になっています。