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なぜ政府は「家計消費4.6%大幅減」の原因を天気のせいにするのか?=斎藤満

理由その2:将来不安が消費を抑制

政策にかかわる圧迫要因の2つ目として、購買力が増えないほかに、家計は将来の不安を覚え、そのために消費を増やせない事情があります。

8月の消費減少の特徴として、消費性向が前年より4%ポイントも低下(貯蓄率が上昇)していることがあります。消費の減少費目が必ずしも天候要因では説明がつかない中で、全般に消費を抑えている背景には、この将来不安が関わっていると考えられます。例えば年金が減少傾向にあり、先細りにあります。

そればかりか、労働者の4割が非正規雇用で、その平均年収は170万円にとどまり、あらたに貯蓄する余裕さえありません。

すでに貯蓄を持つ世帯でも、マイナス金利政策で貯蓄が金利を生まず、いずれマイナス金利で貯蓄が減るのではないかとの心配をし、しかも政府日銀はなんとしても物価を上げようとしています。

今の貯蓄では将来が賄えなくなります。これらは消費を抑え、少しでも貯蓄を増やしておこうと思わせます。

理由その3:高齢者は実は豊かでない

こうした政策起因の消費抑制要因のほかに、構造的な問題が2つあります。

まず、高齢化が長期的に消費を抑制します。一般に高齢者は豊かで、シルバー消費や孫への支出増が期待されています。しかしここには誤解があります。

総務省の家計調査では、世帯主の年齢階層ごとの世帯当たり貯蓄額が示されています。これによると、世帯主が65歳以上の2人以上の世帯は平均で2430万円の貯蓄を持っていることになっています。

ところが、ここには一部の大金持ちが平均値を押し上げている背景があります。65歳以上の世帯を保有貯蓄金額ごとに並べて中央値をとると1547万円になり、さらに、保有金額階層別に世帯数を並べると、最も世帯が多くなっているところは、貯蓄額が100万円未満の世帯となっています。

数の上では貯蓄をほとんど持っていない高齢者世帯が最も多く、一部の超資産家によって「高齢者像」がゆがめられています。

これを示唆する話があります。政府は介護離職を減らそうと、介護施設の建設に力を入れています。ところが、入居一時金がなく、月々のコストが数万円程度と安い「特別養護老人ホーム」に入居をしたくても入れずに待機している高齢者が14年3月時点でも52万人以上います(厚労省)。

その一方で、中高所得高齢者向けの施設にはすでに空きがあり、そこへさらに政府が増設しようとしています。所得が少なく、安い施設にしか入れない高齢者が多いのですが、これらへの対応が実にちぐはぐです。

すでに団塊の世代がみな65歳以上の高齢者となり、ますます高齢者の割合が増えますが、年金中心の高齢者世帯は、政府の賃金引き上げ策の恩恵にはよくせず、貯蓄のない世帯が多く、年金の減額、医療費負担の引き上げが待っています。これでは消費が増えるはずがありません。

Next: 日本の消費を抑制する「若者の○○離れ」はなぜ起こるのか?

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