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円高材料の米為替報告書を消化する展開に/決算前の下方修正も要注意=馬渕治好

盛りの花~世界経済・市場の注目点

米MMFの新規制は、日欧の銀行にとって打撃か?

先週の日本経済新聞の記事の中で、「米MMF、資金流出加速」や「邦銀、ドル調達綱渡り」といった見出しのものがありました(ともに10/14・金付)。

実は、米国のMMF(マネー・マーケット・ファンド)について、10/14(金)から新しい規制改革が適用されました。米国のMMFは、主に国債で運用する「ガバメントMMF」が過半を占めますが、それ以外のMMFを、「プライムMMF」と称します。今回の規制改革は、このプライムMMFについてのものです(規制改革が決定されたのは、2014年7月に遡ります)。

規制改革は主に2つで、まず機関投資家向けのプライムMMFについて、これまでは基準価格が固定されていましたが、運用成績によって、基準価格が変動することになりました。これにより、高い利回りを得られるかもしれないが、元本割れのリスクも高まる、ということになり、安全性を求める投資家は、引き続き基準価格が固定されている、ガバメントMMFに資金を移しています。

もう1つは、リーマンショック時に、MMFからも資金を下そうという投資家が殺到し混乱を招いたため、解約に対する制限が課されました。

具体的には、機関投資家向けおよび個人投資家向け両方のプライムMMFの流動性が、あるレベルを下回った場合(流動性が低下する、というのは、リーマンショックのような市場のパニックが起こって、MMFが保有する証券を市場に売りに行っても、買い手がつかず換金できない、という事態が拡大することを意味します)、解約しようという投資家に対し、解約手数料を割り増しする、という規制です(これに加え、解約そのものを規制する、ということも追加されました)。

こうした規制に対し、投資家は、規制される前に解約してしまおうと、やはりプライムMMFから資金を引き揚げています。

こうしてプライムMMFから資金が流出しているわけですが、これがなぜ注目されているかというと、日欧を含む金融機関が、米ドル建てCP(コマーシャルペーパー、一種の短期社債)を発行してドル資金を調達しようとした場合、プライムMMFが大いに買い手になってくれていたからです。ところが、プライムMMFからの資金流出により、有力なCPの買い手が減って、銀行の資金調達が苦しくなっている、との憶測が生じています。結果として、LIBOR(ロンドン銀行間金利)などの、銀行同士のドル建ての融資金利が上昇しています。

そもそも、なぜ日欧の銀行が、米ドルが必要かと言えば、海外において米ドル建てで融資する場合、手持ちの円やユーロを米ドルに換えて融資すると、為替の変動リスクを引き受けなければなりません。それを避けるため、米ドルで借りて、米ドルで融資する、という形態をとるわけです。

ただし、銀行が米ドルを調達するのは、CPの発行だけではなく、様々な手段があります。また日銀は、銀行の米ドル調達が苦しくなるかもしれない、という懸念は既に承知しており、邦銀に対する日銀からの米ドル融資を強化しています。

こうした点から、市場が銀行の資金調達が苦しいのではないか、と過度な懸念に走る局面があれば、それは心配し過ぎだと判断できるでしょう。

Next: 改めて、米財務省半期為替報告書とは?~世界経済・市場の用語などの解説

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