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円高材料の米為替報告書を消化する展開に/決算前の下方修正も要注意=馬渕治好

理解の種~世界経済・市場の用語などの解説

米財務省半期為替報告書、四たび

米財務省半期為替報告書については、当メールマガジンでは既に3回ほど取り上げており、直近では第253号(2016年5月1日付)で解説しましたが、今号でも紹介します。

米国の半期為替報告書(Report to Congress on International Economic and Exchange Rate Politics、直訳すると「国際経済及び為替政策についての議会向け報告書」、内容を踏まえてもう少し意訳すると「諸外国における経済政策及び為替政策についての、議会向け報告書」)は、財務省が作成し、議会に年に2回(原則、4月15日と10月15日)提出され、同時に公表されます。ただし15日に提出・公表されたことはほとんどなく、日はかなりずれます。

この報告書は、1988年に作成が立法化され、それから継続して作成されています。

過去にこの報告書が注目されてきたのは、中国を為替操作国(不当に為替を操作している国)として認定するかどうか、という点でした。以前は、中国、韓国、台湾などが為替操作国とみなされたことがありますが、1994年以降は、対外配慮からか、どの国も為替操作国としては認定されていません。

既に昨年(2015年4月9日と10月19日)公表された半期為替報告書においては、欧州はドイツが輸出に過剰依存していると示唆されました。つまり、ユーロ安でドイツからの輸出を支える、という政策が行き過ぎている、との批判です。また日本についても・金融政策に依存しているとの指摘で、量的緩和で円安を目論むような姿勢について、牽制されたと解釈されました。

ということは、米国が、対米ドルでのユーロ安や円安について不満を表明していたのは、既に昨年からのことであって、その点では、いまさら騒ぐようなものではありません。

今年4月29日に公表された同報告書では、そうしたユーロ安・円安に対するけん制姿勢に加え、新たな動きがありました。それは、中国、ドイツ、韓国、台湾とともに、日本を、「監視リスト」に指定したことです。この「監視リスト」という扱い自体が昨年までは存在せず、今年2月に議会で成立した「貿易円滑化・貿易執行法」に基づくものです。

「監視リスト」に含まれた場合、3条件(対米の貿易黒字が年間200億ドルを超える、全世界に対する経常黒字が名目GDPに対して3%を超える、自国通貨売り・他国通貨買いの為替介入額が名目GDPの2%を超える)すべてに抵触すると、米国は是正策を求め、是正されないと制裁することになっています。現時点で日本は、対米貿易黒字と経常黒字の条件に抵触しています。

こうした他国の通貨安をけん制するような法律である「貿易円滑化・貿易執行法」が成立した背景は、TPPの成立で貿易の自由度が進むと、米国の競争力が弱い産業が、日欧の企業に負けてしまう、といった懸念が議会で強かった(あるいは、議員自身はそう考えていないが、今年11月の議会選挙を前に、米国内の輸出企業から票が欲しい)という背景があります。つまりたぶんに政治的な色合いが濃く、今年11月の選挙を過ぎれば、あるいは米輸出企業の業績が良くなれば、日本やドイツなどに対するけん制が峠を越す、といった展開もありえます。

また、当報告書は、秩序立って市場で円高が進んだ際に、日本が円売り介入をしたり円安誘導的な政策をとることをけん制しているわけですが、中長期的に、日米景気格差・金利格差に沿って、秩序立って市場で米ドル高・円安が進んだ際は、「日本は円売り介入したり自国通貨安政策をとったりしてはいけないが、米国は米ドル売り介入をしてもよい」とまで厚顔無恥なことは言えないでしょう。

脇道の花~道草の話題

秋の味覚

秋もおいしいものが多いですが、読者の皆様は、秋の味覚というと、何を思い浮かべられるでしょうか。

マツタケはもともと高いですし、サンマも最近は不漁で高いので、筆者としては、まず栗でしょうか。焼き栗は、パリでは秋の風物詩です(パリで食べたことはありませんが…)。果物では、柿もおいしいですね。生の柿より干し柿が好きですが、干し柿はどちらかと言えば冬の物ですね。

おいしい秋の物を食べるため、「天高く馬肥える秋」と言いますが、馬ではなく馬渕が肥えるとメタボになってしまうので、気を付けます。

セミナーのお知らせ

※当面の各地での自主開催セミナーは、下記の通りです。すべて有料セミナーです(参加費、時間などは、それぞれ異なります)。学生の方には、学生無料枠もあります。
カッコ内の数字は、(現時点での参加お申し込み数/定員)です。

12/4(日)名古屋(愛知県名古屋市中村区)(6/25)
12/10(土)高岡(富山県高岡市)(1/25)
12/17(土)浅草(東京都台東区)(12/25)
12/23(金、祝)葛西(東京都江戸川区)(8/30)
12/24(土)横浜(神奈川県横浜市中区)(2/25)
1/7(土)大阪(大阪府大阪市中央区)(2/25)
1/28(土)札幌(北海道札幌市中央区)(3/30)

以上の諸セミナーについての、詳細やお申し込みは、
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上記以外のセミナーも、公開可能なもの(有料、無料にかかわらず、参加者が限定されていないもの)は掲載しています。セミナーの受付が開始され次第、順次掲載していきますので、お手数ですが、こまめに上記ページをご確認いただければと思います。


※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2016年10月16日号の抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2016年10月16日号外)より
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