fbpx

円高材料の米為替報告書を消化する展開に/決算前の下方修正も要注意=馬渕治好

来たる花~今週(10/17~10/21)の世界経済・市場の動きについて

米財務省半期為替報告書を消化する展開へ、日米の企業決算への注目も高まってこよう

(まとめ)
今週は、まず為替市場においては、先週末 11/14(金)の現地時間夕刻に公表された、米財務省半期為替報告書を消化しなければなりません。同報告書の内容を素直に読めば、米ドル安・円高材料だと言えます。

その後内外市場は、米国では引き続き企業決算発表に関心が向かうでしょう。日本でも7~9月期の決算発表が始まります。ただし、発表社数が増えるのは、来週以降となります。とは言っても、決算発表を前にした企業側の自社収益見通しの下方修正は、いつ出るか、予断を許しません

(詳細)
先週末 11/14(金)の米国東部時間夕刻(おそらく午後4時半頃だと思われますが、正確な公表時点がわかりません)に、米財務省半期為替報告書が公表されました(半期為替報告書が何か、という点については、この後の「理解の種」もご覧ください)。この公表時点では、米国における為替取引はほぼ終わっていますので、同報告書の内容を本格的に消化するのは、週明け11/17(月)の東京市場から、と考えてよいと思います。

同報告書では、2015年4月以降、米ドル高・円安、米ドル高・欧州通貨安をけん制するトーンを強めていますが、今回も、円高に進む相場の動きは「中長期的なファンダメンタルズに沿っている」ものであり、「市場は円滑に機能している」、すなわち、円高に進む市場の動きはおかしなものではない、と述べ、米ドル安・円高が自然だと主張しています。

加えて、今年4月の同報告書では、中国、韓国、台湾、ドイツと並んで、日本を「監視リスト」に載せ、日本が今後為替介入を行なえば、制裁対象になりうるとしていました。今回も、日本は監視リストに載ったままで(スイスが新たにリストに加えられました)、米国が厳しい目を注いでいると言えます。

こうした同報告書の内容を素直に読めば、米ドル安・円高をもたらす要因としか考えられないので、週明けの東京市場から、円高に振れると予想しています。ただし、「チャートでみればどんどん円安が進むんだ、数年に一度の外貨の買い場だ、半期為替報告書など、前回4月と同じ材料で新味がない、ここで外貨買い・円売りをしないでどうするんだ」と煽る専門家がいて、それに惑わされてしまう投資家も多いことが、頭が痛いところです。

米大統領・議会選挙に絡む、政治的な米ドル安圧力については、足元の大統領選がトランプ氏の舌禍を巡っての非難合戦に終始するといった感が強く、既に2回行なわれたテレビ討論会でも、まともな経済・外交政策の議論は脇に押しやられ、具体策に欠ける印象が色濃かったです。ましてや為替政策などは言及もされませんでした。

10/19(水)には3回目のテレビ討論会が予定されていますが、引き続き低レベルな応酬にとどまり、為替については言及がない可能性が高いです。ただ、その後も3週間近く選挙戦が続きますので、どこかで「米輸出企業の雇用を守るため、米ドル安が望ましい」という主旨の発言が飛び出すリスクは高く、選挙が終わるまでは、要注意です。

米国では、7~9月期の決算発表社数がぐんと増えてきます。近年は、ポジティブサプライズ(決算実績が、事前のアナリスト予想の平均値を上回る)が、ネガティブサプライズ(実績が事前予想を下回る)を、数の上で上回る機会が多くなっており、今回も決算発表が一巡してみれば、株式市場にとってそれほど悪くないだろう、との観測が有力です。

日本でも、7~9月期の決算発表が始まります。ただ、まだ安川電機など、発表が早い企業に限られ、発表の本格化は、来週以降となります。

とは言っても、決算発表前に、今週にでも、自社の収益見通しを下方修正する、あるいはいろいろな観測報道が流れる、ということは十分ありえます。4~6月期の決算発表時は、3月本決算企業の場合、まだ3か月しか経っていない、ということから、収益見通しを上にも下にも修正する企業の数は、少なかったと言えます。しかし半年分の情勢が見えてくると、通期の見通しを直す企業が多くなってきますし、日本の場合、上方修正より下方修正を積極的に行なう企業が先行する傾向がありますので、今週から既に、下方修正リスクには要注意でしょう。

この他の材料としては、10/20(木)にECBの定例理事会がありますが、ここでは金融政策の変更はないでしょう。また、2017年3月に期限が来る量的緩和を延長するかどうかについても、現在は検討中だとして、ドラギ総裁は明言を避けるでしょう。

中国では10/19(水)は、統計の集中発表日で、9月の鉱工業生産、小売売上高などのほか、7~9月期のGDP統計も発表されます。先週の貿易統計のようなことが起こらない、とは言えませんが、中国経済の緩やかな減速を確認するにとどまり、市場に大きな波乱は生じにくいと考えています。

日本では、日銀から支店長会議に合わせての地域経済報告(いわゆる「さくらレポート」、10/17・月)、9月の訪日外国人客数統計(10/19・水)、同月の百貨店売上高、コンビニエンスストア売上高など小売の諸業界統計(ともに10/20・木)などの発表が予定されており、国内景気の状況を見極めようと、注目が集まるでしょう。

Next: 米MMFの新規制は、日欧の銀行にとって打撃か?~世界経済・市場の注目点

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー