再び理財商品リスクが高まっている。今回の件で規制が厳しくなり、非常に望ましい長期投資家の買い=資金流入が鈍化するならば、それは直接株式市場に影響を与えそうである。(『中国株投資レッスン』田代尚機)
当局の規制強化で中国株式市場への長期資金流入が鈍化の恐れ
保険商品に問題発生
再び理財商品リスクが高まっている。
保険会社が販売する万能保険(ユニバーサル保険)において、一部の保険会社の運用方針について法令違反の疑いが高いとして、当局は取り調べを始めた。
保険会社は万能保険といった「生命保険に投資信託を組み合わせたような商品」を販売している。
たとえば、平安保険のホームページをみると、“知悦人生”といった商品が紹介されている(注:ちなみに、平安保険に問題があるわけではない。あくまで、万能保険の例がわかりやすく書かれているので例として挙げているだけである)。
この商品では、生命保険部分について、癌、傷害、入院などの特約内容や保障額を自己で設計したうえで、理財部分については、保証利回りについて、低(1.75%)、中(4.5%)、高(6%)から選ぶといった仕組みになっている。
http://life.pingan.com/rxcp/jiankangbaoxian/zhiyuerensheng.shtml?WT.mc_id=PC_chaoshi
形の上では、一般の生命保険と同様に毎年決まった額の保険金を払うのだが、収益部分が大きいので積立預金や投信のような感覚で投資できる。
2014年9月から販売が解禁されたようだが、今年に入ってからは伸び率が鈍化しているようだ。とはいえ、1~10月における保険投資口座残高の純増額(ほとんどが万能保険の理財部分による投資純増額)は1兆500億元で74%増加している。1-3月では214%増で、それと比べれば増加率は鈍化しているものの、依然として高い伸び率であり、また、相当な金額である。
こうした商品は欧州では非常に多く販売されている。ここまでの話におかしなところはまったくない。
問題は保険会社の運用にある。
敵対的買収の資金源に?
ここで視点を変えたい。
本土不動産業界のトップ企業である万科企業(深センA株000002、深センB株200002、H株02202)が、敵対的買収に見舞われている。
2015年7月、姚振華氏が100%権益を所有する深セン市宝能投資集団有限公司(宝能)が万科企業の株式買占めを開始、8月には発行済み株式総数の15.04%を取得。一旦、華潤股フェン有限公司(華潤)を抜き、筆頭株主となった。9月には華潤に抜き返されたが、その後、株を買い増し、12月には22.45%を取得、再び筆頭株主に返り咲いている。
万科企業の王石会長はこの時点で、正式に「宝能が大株主になることを歓迎しない」と発言。安定株主(安邦財産保険、安邦人寿保険など)を引き込み、買占め阻止に動いた。
その後、万科企業は企業リストラ案をめぐり華潤と衝突、華潤に宝能が加担したことで、リストラ案は廃案となっている。
さらに、宝能は臨時株主総会を要求、王石会長以下7名の取締役の解任などを求めたものの、今度は華潤がこれに反対。これも実現に至らなかった。
7月には万科企業は、宝能の違法行為に対して調査を求める報告書を証監会、深セン取引所などに提出。8月には恒大集団が買収に乗り出し、買収劇はさらに複雑になっている。
11月29日の段階で、筆頭株主は宝能で25.4%、華潤が15.3%、恒大集団が14.07%を占めるといった状況である。経営権の行方は依然として混沌としている。
問題となっているのは、宝能、恒大の資金源である。宝能は同社が実質的に支配する前海人寿の名(ただし、商品カテゴリーごとに分別管理されているため、口座数は複数)で株式を取得している。
恒大集団は傘下企業を通じて株式を取得したと発表している。詳細は不明だが、先週の当局の動きからすれば、傘下の恒大人寿が関連しているとみられる…。
12月3日、中国証券監督管理委員会はHP上で、劉士余主席による中国証券投資基金業協会第二回会員代表大会での講演内容を公表した。この中で、流通市場において、敵対的で激しい買収劇が相次いでいることについて、「野蛮人による、まるで強盗のような買収はヒューマニズムの面からも、商業道徳の面からも著しく逸脱した行為であり、刑法への挑戦でもある」などと発言している。
劉士余主席は大きなレバレッジを使った買収や、由来の不当な資金を用いた買収を厳しく批判しており、「玄関から入ってきた野蛮人が業界の強盗と化している」などといった厳しい表現が使われている。
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