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金融政策の限界を知る2016年~世にも馬鹿げた「異次元の金融緩和」=近藤駿介

緩和も地獄、出口も地獄。日銀の「金利リスク」は何をもたらすか?

次に問題なのは、銀行や信用金庫以上に、日銀の抱える「金利リスク」が増えてきていることです。

日銀は昨年から期間の長い国債の買い付け量を増やして来ており、昨年12月末時点で日銀が保有する国債は325兆強に達しています。日銀が保有する国債ポートフォリオのリスク特性(修正デュレーション)が、日本国債全体のそれとほぼ同じ(修正デュレーション=8.83年)だと仮定すると、日銀が抱える「金利リスク」は28.7兆円と、10兆円といわれる銀行と信用金庫が抱えている「金利リスク」の約2.8倍に及びます。

日本経済新聞の記事では、金融庁は「リスク量が自己資本の一定割合を超えた場合、報告命令や業務改善命令を出す」方針であると報じられています。

この自己資本ですが、全国銀行協会に加盟する銀行116 行の2015年3月末の「純資産の部」の合計は54兆6846億円と、10兆円ともいわれる「金利リスク」の4倍以上の自己資本を持っています。

これに対して、28.7兆円と銀行と信用金庫の約2.8倍の「金利リスク」を抱える日銀の資本金は僅かに1億円に過ぎず、8兆円強ある「準備金」を含めても、日銀が抱える「金利リスク」は「純資産の部(自己資本)」の3.5倍以上にあることになります。

つまり、日銀は金融機関から大量の国債を買い入れることで、民間金融機関を遥かに上回る「金利リスク」を抱えるようになっているのです。

剰余金の処分については、日本銀行法第53条第1項により当期剰余金の5%相当額を法定準備金に積み立てることが義務付けられているが、『量的・質的金融緩和』の実施に伴い、従来よりも収益の振幅が大きくなると見込まれることを踏まえ、財務の健全性確保の観点から、これを超える2,522億円(当期剰余金の25%相当額)を、同条第2項に基づく財務大臣の認可を受けたうえで、法定準備金に積み立てることとした。
出典:第130回事業年度(平成26年度)決算等について :日本銀行 Bank of Japan

異次元の金融緩和による「金利リスク」の拡大に対応するため、日銀は法定準備金を2,522億円積み増しています。これは日銀の国庫納付金が2,522億円減額されたこと、財政的に苦しい国の歳入が同額減ったことを意味します。

民間金融機関をはるかに上回る「金利リスク」を抱える日銀に対しても、金融庁は「報告命令や業務改善命令」を出すつもりなのでしょうか。それとも目を瞑るのでしょうか

日銀が異次元の金融緩和と称して金融機関から国債を大量に買い入れることによって長期国債の金利が低下させるということは、国債全体の修正デュレーションを上昇させることで、日銀を含め国債保有者の「金利リスク」を高めるものです。

つまり、日銀は金融機関から国債を大量に買い入れることで、規模と修正デュレーションの長期化の両面から自らの「金利リスク」を高めるという、金融的に信じ難い政策を推し進めているのです。

新年を迎え、専門家と称される人達が株価や為替の見通しを披露していますが、日銀による追加緩和に関しては市場にポジティブな影響があるという意見が大半を占めています。

しかし、世界の金融の専門家が、FRBがQE(量的緩和)を止め、金利を含めて金融政策の正常化に向かい始めているなかで、さらに自ら「金利リスク」を生み出す「金利リスク」を抱えようとする日銀の追加緩和をポジティブに受け取る保証はあるのでしょうか。

日銀が追加緩和に踏み切ったとしても、専門家と称される人達が指摘する様な都合の良い「円安・株高」になるとは限りません。追加緩和が日銀の財務内容に対する信頼を失墜させることになれば、とんでもない円安、大幅な株価下落、大幅な長期金利上昇という事態を招きかねないからです。

異次元の金融緩和の本来の目的である「2%の物価安定目標」の達成がほぼ不可能になるなかで、国家財政に負担を掛けてまで、中央銀行の財政不安を招きかねないこれ以上の追加緩和をする必要があるのか大いに疑問です。

日銀の追加緩和に期待を寄せ過ぎている国内投資家は、追加緩和が先送りされれば失望観を強めていくことになると思いますが、追加緩和に踏み切れば世界の投資家から「自爆緩和」として呆れられる可能性も否定出来ません。

追加緩和に踏み切るも地獄、追加緩和を止めるも地獄…。2015年は「中央銀行試練の年」でしたが、2016年は「金融政策の限界を知る年」になりそうです。

【関連】異次元緩和は失敗だった。クルーグマンの『Rethinking Japan』を読む=吉田繁治

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近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2016年1月7日号)より
※本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動してきた近藤駿介の、教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるマガジン。

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