ECBの追加緩和、FRBの利上げ、日銀の「補完措置」と、主要中銀が動いた結果は、いずれも市場の失望を買う結果となりました。かつてグリーンスパンFRB議長(当時)は、「中銀の信用を築くには何十年もかかるが、失うのは1日で十分」と言いましたが、今回の一連の事件は、中央銀行に大きな試練をもたらすことになるかもしれません。(『マンさんの経済あらかると』)
米利上げと「補完措置」後の米日中銀を待ち構える大きな試練
市場の失望を買った主要中銀
先のECB(欧州中央銀行)が市場の期待に応えるだけの追加緩和を打ち出せず、市場の失望を買ったのに続き、先週金曜日には日銀が「サプライズの追加緩和?」を提示したものの、内容が失望を買うもので、総裁自らも「追加緩和でなく、QQEの補完措置」と釈明せざるを得ないもので、為替も株も乱高下の末、失望売りの結果となりました。
皮肉なことに、ECBの追加緩和、FRBの9年半振りの利上げ、日銀の「補完措置」と、主要中銀が軒並み動いた結果が、いずれも市場の失望を買う結果となりました。
これは金融政策の限界を示唆することにもなりました。
このうち、FRBの利上げについては、自国経済の強さの証拠との評価も見られますが、実際には世界経済が脆弱で、デフレ圧力が蔓延し、長年のゼロ金利均衡が成り立ち、超緩和に依存した経済運営、企業経営が染みついた中で、米国がその均衡を破壊したことの影響がいかに大きいか、今後の世界経済、世界市場に現れると思いますので、別途報告します。
露呈した「異次元緩和の限界」
ここではECBや日銀の措置にみられる「異次元緩和の限界」露呈についてお話しします。両者がこれまでの積極緩和にもかかわらず、依然として「追加緩和」が期待される裏には、大規模な金融緩和によっても、景気浮揚、インフレ率引き上げが容易でないこと、つまり金融緩和効果の限界を示しています。
そしてさらに、その金融緩和を続ける副作用が個々に表面化しはじめ、これ以上のモルヒネ注入に待ったをかける声が出始めたことをも示唆しています。
例えば、ECBの追加資産購入に際しては、ECBの市場への影響力拡大を抑制するために、ECBの市場占有率を33%以上にしないと言う「33%ルール」に抵触する可能性があることも、ドイツなどの強い反発を呼びました。
供給量の少ないドイツ国債を大量に買い続ければ、今のペースでも17年には33%を超えてしまいます。また、ECB預け金のマイナス金利も、域内銀行のコスト高となって経営を圧迫するうえに、北欧諸国との為替切り下げ競争を煽ることにもなります。
ドラギ総裁の「何でもやる」意欲に反し、できることは限られていることが市場にも察知されてしまいました。
日銀も同じような限界にぶつかっています。黒田総裁はこれまで一貫して「QQEには問題はない」と言ってきましたが、今回提示した「補完措置」は、このまま異次元緩和を続けるなら、手当てしておかなければならない措置で、それだけ限界に来ていたことを意味しています。
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