8050問題~増え続ける中年「引きこもり」
2019年5月28日。神奈川県の川崎市登戸でひとりの男が小学生の児童や保護者らを次々と刺すという通り魔事件が起きた。この事件の犯人は中年の「引きこもり」だったのだが、日本には推定200万人近い引きこもりがいることが報道された。
この200万人近い引きこもりは親の家や資産で生きているのだが、貧困と格差が広がっていく今の日本では親もまた困窮し始めている。
そこで起きているのが「8050問題」である。80代の親が50代の引きこもりの子供を抱えてどちらも共倒れする。親が子供を殺したり、子供が親を殺したり、親が死んだまま子供が数ヶ月も何もしないで過ごしたり、8050問題から派生する悲惨な事件が次々と起きている。
社会的には「存在しないも同然」の人間と化す
ところで、この8050問題の行く末に待つものは何か。
引きこもりの子供が親の貯金を食い潰したら、最後に起きるのは「住所の喪失」なのである。親が持ち家でなければ貯金が底をついて年金だけではどうしようもなくなった時、親も子も住所を失う。
行政とうまく連携して生活支援や生活保護が受けられる人もいるのだが、こうした問題を「人に相談するようなものではない」「自業自得」「不徳の致すところ」として一身に抱えて自滅していく。
このように俯瞰して見ると、今の日本で起きている「車上生活」「漂流女子」「8050問題」はそれぞれタイプは違うのだが、その根っこの部分ではつながっている、あるいはつながっていくことが見て取れるはずだ。
日本の貧困と格差の問題は、いよいよ「住所喪失」の問題になっていくのである。
住所喪失が深刻なのは、現代社会のすべての行政サービスや社会システムは住所に紐付いているからだ。住所がなければ行政サービスを受けることができない。住所がなければ企業のサービスを受けることもできない。住所がなければ就職することすらもできない。
住所を失えば、社会的には「存在しないも同然」の人間と化す。貧困の統計からも、その存在が消える。