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G20で中国を袋叩きにした米英 “市場の安定”を演出する欧米系ファンド次の狙い

「人民元の切り下げはしない」言質をとられた中国

市場不安のもう一つの要因であった人民元の引き下げについても、この「通貨安競争」の縛りをかけました。そして李克強首相から、引き続き人民元の切り下げはしないとの言質をとりました。

その点、米系ファンドの中には、人民元売りで市場かく乱をしたい勢力もあり、ここはアジア周辺国への配慮を優先した形です。

これで中国は人民元安による輸出拡大に逃げる道を封鎖され、米国議会の意向を通したことになりますが、その一方で中国経済の減速を回避する手段として、中国を念頭に置いて、「構造改革」を成長の柱として書き込ませました。

しかし、中国での構造改革は目下のところ政治改革の色合いが強く、習近平体制強化のために、腐敗一掃と称して反体制派の排除に注力しています。

このため、構造改革が当面中国の成長を促進することにはならないと見ますが、構造改革の中で、欧米資本は何らかのビジネス・チャンスを見出そうということだと思います。米国のネオコンなどは、むしろ中国経済の弱体化をはかり、米国支配の強化、米国資本の関与を強める意向のようです。

米国は利上げで中国経済を締め上げる

当然のことながら、市場が最も気にする米国の利上げに関しては、参加国が米国に利上げを抑制するよう、圧力をかけることができず、むしろ米国の利上げを所与のものとして、その結果生じるであろう、中国や新興国からの大量資本流出に対処するよう求めました。明らかに米国(ネオコン)の勝ちです。

つまり、米国は引き続き利上げで中国経済を締め上げると宣言したようなもので、中国としては「作業部会」を設置して資本流出を監視する、というしかありません。議長国としてのメリットを使うにも、米英に押し切られた感があります。

その象徴例が、英国のEU離脱への文言挿入でした。中国としてはもともとこれを書き込む予定はなかったのですが、離脱を押さえ込みたい英国政府のごり押しを、米国財務省が後押しする形で、あえて声明文に、英国のEU離脱はリスクが大きいとの認識を共有した形を作らざるを得ませんでした。

つまり、G20は英国のキャンペーンに利用されたわけです。

欧米系ファンドは意図的に「市場の落ち着き」を演出?

以上のように、中国は議長国としての権限を十分利用できないまま、米英に押し切られ、「協調」の成果を謳うこともできませんでした。

これに期待した市場は失望の反応をするリスクがありますが、ここで市場の不安定を再現しては、原油価格を落ち着かせた意味がなくなり、3月利上げの予定が狂います。欧米系ファンドは、意図して市場の落ち着きを演出する可能性があります。

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マンさんの経済あらかると』(2016年2月29日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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