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チャットワークが成長するためには、ソーシャルワーカーのリスクを軽減する施策が必要

思考実験──片づけるべき用事とは

『ジョブ理論』によれば、以下の問いに答えることで用事をより具体化できるようになる、としています。

1.その人がなし遂げようとしている進歩は何か。求めている進歩の機能的、社会的、感情的側面はどのようなものか。

2.苦心している状況は何か。誰がいつどこで何をしているときか。

3.進歩をなし遂げるのを阻む障害物は何か。

4.不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。ジョブを完全には片づけてくれない商品やサービスに頼っていないか。複数の商品を継ぎはぎして一時しのぎの解決策をつくっていないか。

5.その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、その解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か。

出典:『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(第2章 プロダクトではなく、プログレス)

用事の特定

イノベーションを起こすための最初のステップは、ある状況下で顧客がなし遂げようとしている進歩を特定することです。そして、その進歩には機能的、感情的、社会的側面があり、どれが重視されるかは文脈によって異なってきます。また、用事を特定することにより、真の競合相手もみえてきます。では、同社の場合はどうなるのでしょうか。

今回は、同社が課題としてあげる「顧客基盤の拡大」を取り上げます。同社はそれを、次のように認識しています。

現時点では、Web広告や口コミに基づくフリーミアムからの利用者の増加と、利用拡大に伴う課金ID化が当社成長の中心となっておりますが、今後更なる顧客基盤拡大のため、営業人員の増強や販売代理店の新規開拓といった積極的な販売網の拡充を行ってまいる所存です。また、既に展開している士業や介護、建設等の業種ごとの人脈やネットワークを活用した営業アプローチの推進を、他業種へも拡大してまいります。

急激に拡大しているクラウドソーシング業界では、一部のクライアントが、ワーカーとのやり取りにプラットフォーマーが用意しているメッセージ機能ではなく、外部のサービスであるChatworkの利用を求めてくるケースが多々あります。確かに、Chatworkを利用すればリアルタイムのやり取りができるかもしれません。しかし、そのやり取りはプラットフォーマーには把握できないため、クライアントとワーカーとの間でトラブルが発生してもプラットフォーマーは対応のしようがありません。これは、ワーカーにとってはリスクです。

こういった状況で顧客──クラウドソーシングで仕事を受注しようとする個人──がなし遂げようとする進歩の機能的側面は「仕事を受注する」ということ。感情的側面として「面倒の回避」「リスク低減」といったことを重視するでしょう。

なお、同社は競合を次のように認識しています。

当社が事業を展開するビジネスコミュニケーション市場においては、各種ハードウェア・ソフトウェア及びサービスを提供する企業が多数参入しており、近年においては、クラウドサービス形態により関連サービスを提供する企業も増加しているものと認識しております。当該領域においてビジネスチャットツールを提供する企業も複数存在しており、これら企業との間で競合が生じております。また、一般にインターネット上で提供されるクラウドサービスは参入障壁が低いものと認識しております。

当社は、ユーザビリティや汎用性の高さ、強固なセキュリティ機能等を追求することにより、他社との差別化を図っており、今後も継続的にユーザー・インターフェースの改善や企業ニーズに応じた機能強化を実施していくことにより、サービスの競争力の維持向上に努めていく方針であります。

なお、当社は、競合企業の参入や拡大については、ビジネスチャットツール全体の認知度向上に繋がるものと考えられ、当社事業にとっても一定のメリットがあるものと考えておりますが、過度な価格競争等を含む競合の激化が生じた場合や、当社における十分な差別化が困難となり競争力が低下した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

Next: チャットワークが改善すべきは、ユーザーが安心して使用できる仕様

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