投資家たちはアダム・ニューマンの夢に賭けた?
ウィーワークというのは、カリスマ的な雰囲気を持つアダム・ニューマンという創業者が立ち上げた会社だ。
アダム・ニューマンは、「世界の意識を引き上げる」「我々が世界を変える」みたいなビジョンを大袈裟に語り、大風呂敷を広げながら投資家を引き込んで、借金の規模を膨らませながら会社の規模を大きくしていった。
その調達金は凄まじいものがあった。2014年には300億円、2015年には1,000億円、2016年には430億円、2017年には760億円と、次々と投資家からカネを引き出していたのである。
投資家は本当にウィーワークがそんなに価値があると思っていたのか。いや、彼らは財務諸表を見てウィーワークの簿価を算出したのではなく、アダム・ニューマンの勢いを見てカネを出資していただけだ。
アダム・ニューマンと一緒になって「ウィーワークはすごい価値がある」と世間を煽り、最終的には「IPOで売り逃げ」するつもりでそれを行っていた。
つまり、IPO(株式公開)という出口を見据えた壮大なババ抜きゲームだったのである。
そこに最後にやってきたのが、孫正義だった。
ウィーワークの目論見書はボロボロ
孫正義は、ヤフーやアリババでこの手法を成功させた経営者でもある。
そこでこの手法をより大規模にするために、ビジョン・ファンドという投資ファンドを立ち上げて、どんどん新しい会社を買っていった。ウィーワークもまたそうした企業のひとつとして孫正義は目を付けたのだった。
孫正義もまたウィーワークのIPOでがっぽりと儲けられると皮算用して出資しているので、ウィーワークの「実際」の企業価値など目もくれなかった。
しかし、ナスダックに上場するためには、ごまかしのない目論見書や決算書を提出しなければならない。
ウィーワークの目論見書はボロボロだった。
化けの皮が剥がれたアダム・ニューマン
さらに、アダム・ニューマンは自分個人の不動産をウィーワークに買わせて自分だけに利益を得たりするような背信行為を裏で行っていたり、スピリチュアルみたいなものにハマっている妻に経営や人事に口出しさせたり、自家用ジェット機で世界中を飛び回って酒とパーティーに明け暮れたりして遊び回っていた。
そうしたものがすべて発覚して、IPOは失敗し、ウィーワークは一気に経営危機に陥り、こんな会社に1.1兆円も払った孫正義が窮地に陥った。
そして、ウィーワークを支えるためにさらに1兆円も突っ込んで、今度はソフトバンクの経営は大丈夫なのかと、投資家に疑念を抱かせる状態になっている。