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高校授業「現代社会」廃止で「公共」新設へ。なぜ基本的人権の保障・平和主義を消した?=原彰宏

目的は「道徳教育」の徹底にある

政府は、18歳から選挙権が与えられたことを改訂の理由としていますが、報道などでは、その実は、道徳教育を充実させ、安全保障や領土問題について学ばせるという内容も盛り込まれていることから、安倍政権としては、道徳教育を徹底することが目的とされていると指摘しています。

「“公共”を高等学校における道徳教育の柱にしたい」という考えがあるようです。

小・中学校には週1回「道徳」の時間がありますが、今年から「特別の教科道徳」に変わります。文部科学省は、小・中学校でも高等学校でもすべての教科を通じて道徳教育を重視するとしており、「公共」の新設もその一環となっているのです。

「基本的人権の保障」「平和主義」が削除されている

また歴史教育において、世界史必履修を見直す意図は何でしょう。18世紀以降の近現代史学習は必修として、それ以前の歴史学習は選択としているところに何か政府の意図を感じざるを得ません。

新学習指導要領をめぐる社会科系教育の改革に関しては、科学に関する重要事項を審議し政府に対して政策提言などを行っている「日本学術会議」の議論や提言が大きな影響を与えているとのことです。

日本学術会議とは、日本の国立アカデミー(政府より金銭的支援や公認を受けて学術的な研究活動や学術分野における標準化を行っている学術団体)であり、内閣府の特別の機関の1つとなっています。

内閣総理大臣が所轄し、その経費は国の予算で負担されますが、活動は政府から独立して行われるとされています。

従来の「現代社会」は、社会の仕組みなどを客観的に学びますが、「では、君はどう行動するのか」と問いかけるものになっていないのではないか、という認識が背後にあります。

つまり、「現代社会」の科目は、生徒の価値観や生き方の選択を、あくまでも側面から支えることを主としていますが、新たに導入される「公共」という科目は、道徳教育が柱にあり、自分の国を愛することを目的と定められていて、個人の価値観や生き方に直結するものとされています。

さらに、「公共」の学習内容を見ると、現在の「現代社会」で扱っている「基本的人権の保障」や「平和主義」が削除されているのです。

ここまでの事実を並べただけでも、時代が逆行していく怖さを感じてしまいます。読者の皆さんは、このことを、「公共」という新しい必修科目のことをご存知だったでしょうか。

この新しい学習指導要領は、日本全国の高校では2022年度からで随時実施されます。

Next: 憲法学者の木村草太氏は自身のTwitterで、高等学校学習指導要領で――

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