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株価3倍「鹿島建設」今からでも買い?国策銘柄の恩恵とリスクを長期投資家はどう判断すべきか=元村浩之

日本を代表するスーパーゼネコンの一角である鹿島建設<1812>の株価が、2023年の初頭から足元までで大体3倍ぐらいまで跳ね上がっているという、驚くべき状況が続いています。

鹿島建設<1812> 週足(SBI証券提供)

鹿島建設<1812> 週足(SBI証券提供)

建設セクターは近年、投資家からの注目度も非常に高まっており、今回は、鹿島建設がどのような事業を行い、なぜ株価が長期停滞を経て足元で3倍も跳ね上がる状況になったのか、そしてこれから買いを検討する人が持つべき投資判断基準について、深掘りして解説していきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)

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プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

鹿島建設の事業内容:建築・土木を統括する「街づくり」

鹿島建設はゼネコン、すなわち、ビルやマンション、橋といった大規模な建築・土木工事を、設計から施工管理まで一貫して請け負い、工事全体を統括する大手建設会社です。単に建造物を作るだけでなく、「街づくり」に関わること全体を担っている会社だと捉えることができます。

鹿島建設が取り扱う建造物は幅広く、建築部門と土木部門に分かれています。建築部門では、事務所や庁舎関連が売上の約4割、工場や発電所関連が約3割を占めています。一方、土木部門の売上内訳を見ると、鉄道関係が23%、道路関係が21%といった構成になっています。

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出典:鹿島建設

売上規模の面では、上場しているスーパーゼネコン4社の中で、鹿島建設が業界ナンバーワンを誇ります。また、営業利益率の推移を見ると、他社が直近で変動が激しいのに対し、鹿島建設は緩やかな減少傾向はあるものの、利益のばらつきが他のスーパーゼネコンと比べると低い傾向にあります。

<競合他社に比べてバランスの取れた事業ポートフォリオ>

鹿島建設の事業ポートフォリオはバランスが良いのが特徴です。

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売上比率では、建築が約36%、海外関係が約38%、土木が約14%を占めており、これに加えて、建設以外の不動産設備管理業務などを行う国内関係会社や、不動産開発事業も存在します。

特に注目すべきは、建築事業の売上比率の低さです。競合他社である大林組が70%、大成建設が64%、清水建設が79%を建築事業が占めるのに対し、鹿島建設は36%に留まっています。建築事業は外部環境によって利益が左右されやすいという特徴がありますが、鹿島建設はこの比率が低いため、外部環境の影響を受けにくいという点が強みです。

さらに、鹿島建設は海外の売上比率もスーパーゼネコンの中で高く、約4割弱を占めており、国内だけでなく海外にも事業ポートフォリオを持っていることも大きな特徴と言えます。

<鹿島建設の株価を押し上げた「2つの波」>

鹿島建設の業績は、リーマンショック後の不景気から回復し、2016年3月期頃からは、不採算案件の一巡や東京オリンピック関連の案件などもあり、売上と利益が急激に伸びました。その後、コロナ禍で利益が低迷しましたが、2023年3月期からは再び売上と利益が上昇傾向に転じました。これに連動し、株価は2023年初頭から足元にかけて約3倍に上昇しており、この上昇は2段階の波が見られます。

<第一の波:コストの価格転嫁の実現>

株価上昇の第1の波は2023年初頭から始まりました。コロナ禍では、スーパーゼネコン各社は、先行き不透明な中で新規受注が難しくなったことに加え、資材価格や建材価格の高騰、人件費の高騰といったコスト増に直面し、構造的に利益が出にくい状況に陥っていました。

しかし、2023年頃になると、先行きがだいぶ見通せるようになり、新たに獲得する案件において、資材価格や建材価格の高騰分を織り込んで受注することが可能になりました。つまり、コスト増加分を適切に価格に転嫁できるようになったことで、業績の上方修正が期待できる機運が高まったのです。この時期、建設や土木分野で上方修正を発表する企業が多かったという背景もあります。

Next: 今後も成長は続く?株価急騰の要因、2つ目は…

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