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なぜ米国債格下げで日本株が下落?ここからの動きを読む方法と長期投資家が今やるべきこと=栫井駿介

米国債が格下げされたことによって日経平均株価が下がっています。なぜアメリカの国債に格下げで日本の株価が下がったのでしょうか。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

米国債格下げ!米国株ではなく日本株が下がったのはなぜ?

大手格付け会社のフィッチが米国債をAAAからAA+に1つ格下げしました。

米国債というと、米国ドルという世界で最も通用されている通貨で、これがデフォルト(債務不履行)に陥るとはだれも考えていないはずです。

それでもフィッチが格下げした理由としては、1つは財政の悪化、政府債務の増加があります。

また、大統領と国会にねじれが生じていて、債務上限問題のガバナンスが上手くいっていない問題もあります。

とはいえ、デフォルトはまず考えられないことに変わりはなく、フィッチがなぜ格下げしたのか、分からない部分は多いです。

理由はどうあれ、米国債の信用力が落ちたのであれば米国債が売られるはずです。

しかし、今回の格下げで米国債への影響は限定的で、少し売られて利回りが少し上がる程度でした。

米国債10年 日足(SBI証券提供)

米国債10年 日足(SBI証券提供)

この1年間でももっと利回りが高い時もあり、今回の格下げでいわゆる「パニック売り」は起こっていないことが見て取れます。

ウォーレン・バフェットが米国債の価格が下がったということで買いを入れたという報道もされています。

金利が上がると株価には悪影響となるので、米国株は下がるのではないかと考えられますが、実際はナスダックは少し下がったもののダウ平均はほぼ下がっていないです。

一方で大きく下げたのが日経平均です。

格下げがあってから2日で1,200円も下がってしまいました。

世界でも突出した下げ幅となっています。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

なぜ、米国債が格下げされたことによって日本株が下がったのでしょうか。

この「なぜ」を深堀りすることが、株式市場を理解するうえでは重要なこととなります。

合理的な理由がなくとも下がる株価

しかし、米国債の格下げによって日本株が下がる合理的な理由を考えてみても、なかなか見当たらないところがあります。

1つ言えるのは、2023年に入ってから日本株は大幅に上昇してきたということがあります。

株式市場の一般的な性質として、何か悪材料が出た局面では、直近で上がったものから利益確定売りが出やすいということがあります。

これには投資家心理が関わってきますが、株価が上昇したなら早く利益確定してしまいたくなってしまうものなのです。

上がれば上がるほど、何かあった時にはすぐに売る準備ができているわけです。
一気に上昇したものは同時に下落の心理的圧力も高まっていきます。

一方で欲もあって、上昇が続く間はできるだけそれを引っ張りたいと思っています。

何もない状態もしくはポジティブな材料しかない状態だと基本的には上がり続けます。

その過程で上昇に乗っかりたいという人も出てくるなどしてさらに上がります。

しかし、上がれば上がるほど、ネガティブな材料が出た時には「待ってました」と言わんばかりに株を売る動きが強まります。

これが短期的な投資家心理の動きです。

ここまで日本株が上がってきたということは、多くの投資家は利益確定するための材料を探している状況であると考えます。

こういった短期的な投資家心理を理解していると、バブルなどに惑わされずに済みますし、目先のリスク管理にも有用です。

Next: ここからはどう動く?ファンダメンタルズを分析

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