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kubell Research Memo(7):売上高は前期比13%以上増、EBITDA15億円以上を目指す

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■今後の見通し

1. 2026年12月期の業績見通し
kubell<4448>の2026年12月期の連結業績予想は、売上高10,768百万円以上(前期比13%以上増)、EBITDAを1,500百万円以上(同9.4%以上増)としている。ビジネスチャット事業の基盤拡大を継続するとともに、BPaaS事業の規模拡大と収益性改善を推進し、売上成長の再加速と増収増益の継続を目指す。

中期経営計画では、最終期である2026年12月期の財務目標を売上高15,000百万円、EBITDA1,500百万~2,250百万円、EBITDAマージン10~15%としている。事業別には、SaaSドメインで9,000百万~10,000百万円、BPaaSドメインで2,000百万~3,000百万円、さらにM&A・新規事業で4,000百万円以上を想定している。

この目標自体は変更しないものの、M&Aや新規事業等の一定の不確実性を含んでいることを踏まえて、業績予想にはこれらの効果を織り込まず保守的に設定した。計画値と予想値を峻別する姿勢は、開示の透明性及び実現確度を重視する経営方針の表れである。

2. 弊社の見方
足元の株式市場では、AIエージェントの進展を背景に「SaaS is Dead」といった議論が台頭し、SaaS関連銘柄全般がバリュエーション調整局面にある。しかしながら、同社の主力サービスであるChatworkは、こうした議論の射程から構造的に外れていると弊社では考える。

いわゆる「SaaS is Dead」論は、AIエージェントが各種SaaSからデータを収集・操作することで、ユーザー単位のライセンス契約が不要となり、たとえば100人で1アカウントに集約されるといった形でビジネスモデルが毀損する可能性を指摘する。また、AIがインターフェースとなることで、裏側で稼働するSaaSのブランドやプロダクト差異が認識されにくくなり、依存度が低下するとの指摘もある。

しかし、ビジネスチャットは本質的に「人と人」のコミュニケーション基盤であり、各ユーザーが固有のIDを持ち、相互に会話を行うことが前提となる。ライセンスを集約すれば会話の主体が成立しないため、AIによるアカウント削減のロジックは当てはまらない。ID数そのものが価値の源泉であるという点において、業務管理系SaaSとは収益構造が明確に異なる。

さらに注目すべきは、ビジネスチャットがAIエージェントに「使われる」側ではなく、人間がAIを実行・指示するためのUIプラットフォームとして機能し得る点である。日常的に利用されるコミュニケーション基盤のうえでAIを呼び出し、業務を補完・自動化していく形は極めて親和性が高い。すなわち、AIは代替要因ではなく、プラットフォーム価値を高めるレバレッジとなる可能性が高い。

一部の業務プロセス特化型SaaSが再編圧力を受けるシナリオは想定し得るものの、コミュニケーション系SaaSである同社はその影響を受けにくいポジションにある。むしろAI時代において人とAIを接続するハブとしての役割を強めることで、中長期的な競争優位性を高め得ると考える。市場全体の悲観論とは裏腹に、同社のサービス構造はAI進展と整合的であり、プラットフォームとしての価値向上余地は大きいと弊社では見ている。

3. トピックス
足元のトピックスは以下のとおりである。

(1) ペイトナー請求書事業を譲受
ペイトナー(株)が運営する「ペイトナー請求書」事業を、吸収分割により2026年2月に承継した。ペイトナー請求書は、請求書の回収・管理に加え、振込の予約・実行までを一気通貫で自動化する法人向けクラウド請求書処理サービスである。主な顧客は専任の経理担当者を持たない中小企業やスタートアップ企業であり、業務効率化ニーズが高い層に適合している。

ペイトナーとは2022年12月にCVC経由で資本提携しており、シナジーを十分に確認したうえでの事業譲受であることは特筆すべき点である。本件が2026年12月期業績に与える影響は軽微とされるが、Fintech領域のケイパビリティ獲得及び経理業務DX支援強化という戦略的意義は大きい。Chatwork顧客へのクロスセルやBPaaSへの組み込みによる業務効率化など、中長期的な収益機会拡大が期待される。

(2) kubellストレージを完全子会社化
2025年12月19日、kubellストレージの株式を100%取得し、完全子会社化することを決議した。同時にスターティアホールディングスグループ<3393>と業務提携を開始し、中堅・中小企業における顧客基盤の拡大を目指す。

2021年7月にスターティアレイズ(株)との合弁でkubellストレージを設立し、クラウドストレージ事業へ参入した。これまで両社のノウハウ活用により円滑な立ち上がりを実現してきたが、プロダクト開発の進展により成長蓋然性が高まったことを受け、意思決定の迅速化及びグループ内連携強化を目的に資本構成を見直すことになった。株式移動後も「中堅・中小企業へのBPaaS提供」という共通戦略を共有し、強みを掛け合わせることで顧客基盤拡大を図る。

(3) M&A戦略の考え方とトラックレコード
M&Aは従来より重要な成長戦略の1つであり、今後も積極的に推進する方針である。大きなテーマは2つあり、第1にChatworkをプラットフォームとしたスーパーアプリ構想の推進、第2にBPaaS規模拡大を目的としたBPO事業者のロールアップである。

スーパーアプリ構想では、中小企業のDXを推進するプロダクトやサービスを提供するSaaSベンダー等を想定ターゲットとする。一方、BPO領域ではオンラインアシスタントや経理・労務等の専門領域に強みを持つ事業者を対象とする。常に機会を探索し、非連続な成長を実現する姿勢を明確にしている。

直近2件を含め、M&Aによる事業成長の実績は順調に積み上がっている。既出のkubellストレージの設立及び完全子会社化、ペイトナー請求書の事業承継のほか、2023年1月にミナジンを取得するなどの実績がある。足元でも積極的にソーシングを行っており、持ち込み案件や相談は相当数あると言う。対外的な公表には至っていないが、案件検討は継続している。のれん水準も勘案しつつ、小型案件を連続的に実行していく方針であり、2026年12月期の業績予想である売上高前期比13%以上増の成長と中期経営計画達成を見据えて成長投資を模索している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)

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