租税回避の実態を暴く「パラダイス文書」に、トランプ大統領の側近ウィルバー・ロス氏の名前が。これは深刻な利益相反取引で、政権の命取りになる恐れもあります。(『らぽーる・マガジン』)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2017年11月13日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ロシア疑惑に新たな火種。トランプ腹心「利益相反」の手口とは?
「パナマ文書」の衝撃再び
かつて「パナマ文書」が話題になりました。これはパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した膨大な量の内部文書のことで、南ドイツ新聞が匿名の人物から入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)とともに分析して、2016年5月に21万以上の法人とその株主らの名前を公表。この問題は、アイスランドの首相を辞任に追い込むまでに至りました。
キーワードは「租税回避地」です。すなわち、一定の税金が軽減される、あるいは税金がかからない場所のことで、「タックス・ヘイブン(Tax haven)」とも呼ばれます。
この租税回避地と呼ばれるところに会社を作って、そこに全世界で儲けた収益を集約すれば、税金がかからないということになります。資産運用においても、株などの収益をこの租税回避地に集約すれば、税金の分だけ運用は有利になります。
この租税回避地に会社をつくる仕事をしているのが、「モサック・フォンセカ」というパナマの法律事務所なのです。「モサック・フォンセカ」は、国際的にオフショアを利用する金融関係者なら誰でも知る有名な法律事務所で、たとえば、産業がない小国に「ペーパー・カンパニー」を設立し、合法的スキームを組み上げ顧客の税金支払いを軽減することを行っているのです。
そのスキームの中核を担う法律事務所から、情報が全世界に漏洩してしまったことが、この問題のポイントです。さらに、漏洩した資料には世界的な大企業や政治家、富裕層の人々の名前が記載されていて、公的組織も存在していることが、世界中で大きな波紋を呼んでいるのです。
第2の爆弾「パラダイス文書」
租税回避地に収益を集約することは違法ではありません。ただ、きっちりと税金を納めていれば、それで救われる人たちもいるのではという、倫理観の問題になっています。
そして、租税回避地の利用実態を暴露した「パナマ文書」の公表から1年余りが経過した今、、新たにオフショア地域にある法律事務所から流出した新たな大量のデータにより、富裕層の資産隠しや企業やヘッジファンドの課税逃れが明らかになりつつあります。
この新たなデータはバミューダの法律事務所アップルビー・グループ・サービシズから流出した機密情報で、「パラダイス文書」と称され、オフショアアカウントの利用を白日の下に晒すものです。
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